○第33期囲碁名人戦全記録を読む

久しぶりの名人戦記録です。

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10年前、19才の井山が張名人に初挑戦したシリーズです。

最終局まで縺れましたが、名人が防衛を果たしました。

昨年の芝野名人が誕生するシリーズの事前の展望会で趙治勲名誉名人が、「井山の初挑
戦の時には井山に運があって第7局まで行った。虎丸は本当に強い」と予想していました。結果は、予言の通りに強い虎丸は初挑戦で名人を倒して初の十台名人となりました。

そんなこともあって発掘してきて読んだのですが、井山挑戦者が弱いとは思いませんでしたが、なるほど名人を圧倒するような力を備えていなかったことは感じられました。

それにしても二つ気付きがあります。

序盤の些細なことで形勢を少し損じてしまうと、二日制の碁ではそれを容易に獲り返せないということです。獲り返そうと無理をすると、その無理を咎められてむしろ差が開いてしまい、結局致命傷になる。

最初の些細なミスは、それ自体は致命傷ではないものの、振り返ってみると敗着になってしまっているのです。早碁と違って、簡単には逆転しないのです。

もう一つは対局者同士の形成判断は意外なほど合致するのに、それが立会人や解説者らの検討陣と合致しないことが今シリーズは多かったことです。選ばれなかった図は、対局両者とも否定し、それを提案した検討陣の意見はほとんど納得されませんでした。

言い換えると、このシリーズは二人だけの世界を構築して完結していたように見受けられます。