☆小林光一(現代囲碁名勝負)を読む

bqsfgame2014-10-08

棋書、現代囲碁名勝負の小林光一です。
このシリーズは講談社から発売になり、筆者が囲碁を勉強し始めた頃に大抵の書店で見掛けました。
今になって読み直すと、非常に懐かしく読めます。時期的には、小林光一が二つ目のビッグタイトルである十段を加藤から奪取したタイミングでの編集です。この段階では趙治勲に遅れを取っていたのですが、敢えて二人をライバルと呼んだ故「典」氏の慧眼には恐れ入ります。
小林光一と言うと、武宮評の地下鉄のような碁と言う地に辛く味を残さない棋風を連想する人が今ではほとんどだと思います。しかし、早い時期からファンだった筆者は、それは変身後の姿だと思っていて、むしろ初期は本書に代表される序盤は厚みを取って、それを使って積極的に攻めていく棋風でした。どこかで引用したかと思いますが、小林光一は厚みを早い段階から攻めに使って回収していく積極運用型です。当時は、小林キビキビ流と言われ、彼の好青年振りと相俟って好感の持てる棋風でした。その後、実利派のライバル、趙治勲との幾度もの死闘を経て実利派に変身したように思います。あるいは、師匠の木谷九段の変身を意識したのかもと思います。その意味では、変身の過程や名誉棋聖、名人に至る次の時期の良い打碁集は欲しい気がします。
あと対局相手を見ると、当時の囲碁界の様子が良く判って懐かしい。坂田、藤沢、梶原、林、大竹の諸先輩、石田、加藤、武宮の兄弟子、山城、片岡と言った後輩、高木、石田章、関西のダブル橋本、中国の聶衛平。大体、揃っているでしょうか。
姿が見えない所では、羽根(泰正)、本田(邦久)、石井邦夫の各九段あたりがいれば、完璧だったでしょうか。名古屋、大阪の人とは、やはり対局が少ないのでしょうね。
棋風が序盤から積極志向だった時期なので、勝負の決着が見えるのが早めの棋譜が多いのが一つの特徴です。その意味では、並べやすい打碁集です。地下鉄時代の小林九段しか知らない人にはお薦めだと思います。