ゲームレビュー:サイバーノート

bqsfgame2006-03-06

「サイバーノート」は、わたしの知る範囲ではサイバーパンクの世界をもっともそれらしく描き出すことに成功しているベスト・オブ・サイバーパンクボードゲームだ。
サイバーパンクのゲームと言うと、すぐに思い浮かぶところでは「ハッカー」、「エッジシティ」、「ネットランナー」などがある。しかし、「ハッカー」も「エッジシティ」も、確かにガジェットはサイバーパンクだが、ゲームシステム自体は「イルミナティ」や「タリスマン」であって、ゲームシステム自体がサイバーパンクを鮮やかに再現しているとは言い難い。その意味で「ネットランナー」は、サイバーパンクらしさを持つ独自システムのゲームだが、ネット内での戦いだけを描いていた。
それに対して「サイバーノート」は、リアルワールドとネットランの全体を通したネットランナーとネットセキュリティエージェント(NSA)の戦いを余すところなく描いており、コンパクトでありながら、むしろ膨大な種類のカードを持つ「ネットランナー」より描いている対象は広い。
「サイバーノート」は、COMPETITIVE EDGE誌の11号の付録ゲーム。デザイナーは、あのジョー・ミランダ。ミランダはS&Tの編集長という立場上、本誌ではヒストリカルゲームを大量にデザインしているが、デビュー作が「ニカラグア」、二作目が「SSアメリカ」だったことからわかる通り、ゲリラ戦や架空戦史への関心が元々は深い。
サイバーパンクは言って見れば究極の架空ゲリラ戦な訳だ。彼が自由な小品をデザインできるCOMPETITIVE EDGE誌の場を使って、自分がやりたいものを好きなように作ったのだろう。
個人的な意見としては、彼の独創性がもっとも発揮されたゲームと言うのは、この「サイバーノート」と古代人の視点で見たゲームプレイを意識した野心作「トラヤン」の二つだったと思う。S&Tでは雑誌を支える立場から、定評のあるシステムの使いまわし作品がどうしても多くなっているが、個人的にはこうした独創的な切口をもっと見せて欲しい。
[つづく]