○永遠の森を読む

bqsfgame2006-08-20

菅浩江星雲賞受賞作。
率直に言って、客観的に考えてみて素晴らしい傑作だと思う。ガジェットが美しく、エピソードが美しく、そして全体を通して織り上がるストーリーも美しい。これだけ完成度の高い連作長編はSFに限らなくともおいそれとは見つからないのではないか?
その一方で、個人的には主観的には最後までそれほどピンと来なかった。これは「アイアム」を読んだ時も「柊の僧兵記」を読んだ時も同じで、作品としての出来に特に何の不満もないのだけれども、ピンと来なかった。作者の情念と、こちらの情念とのチャンネルが合っていないという感じだろうか。その意味では、作中の美和子のように分析なく一言で言えば「感じるものがなかった」という感想になるだろうか。分析的に言えば凄い作品だと思うし、そういう評価を書き連ねることは容易い作品だと思う。そのくらい色々な面で素晴らしい出来栄えの作品だと思う。ただ、個人的にはこの作品を読み終えてしまうことを惜しいとは最後のページまで思うことはなかった。