第一印象というのは極めて重要だと思う。
最初に読んだ作品の評価は、その後のその作家との付き合い方に決定的に影響する。ル・グィンとの出会いは「闇の左手」だったが、ダブルクラウンという前評判に期待しすぎたのかも知れないが読むのが苦痛でやっとの思いで読み終えた記憶がある。これがル・グィンと遠ざかる原因となった。
同様にディレーニイは「バベル17」が出会いだったが、これも読み終えるのが苦痛で、終わっても何処が良いのかサッパリ理解できなかった。
しかし、最近になってル・グィンは再評価することが出来るようになったので、ディレーニイにも今一度チャンスを与えてみることにした。ディレーニイは長編よりも短編が良いという意見がいくつかあるようなので、代表的な短編集である本書を読んでみた。
感想としては合格点ではあると思うが、アメリカンニューウェーブをゼラズニイと共に代表する旗手というほどには感心しなかった。
作品の印象としては本書の前半が個人的には好きで、後半は今一つだと思った。前半の諸作品、「スターピット」、「コロナ」、「然り、そしてゴモラ」などは、ドロップアウトしたものからの視点で描かれた作品で、情緒的で散文的なディレーニイの個性とマッチングしている作品だと思う。
それに対して、「ただ暗黒」は体制側の視点の作品で寸の割にはさっぱり感じるものがなかった。表題作の「時は準宝石の螺旋のように」は、アウトサイダーではあるかも知れないが、成り上がっていく成功者の視点の物語で、これはこれで悪くはないのだが前半で抱いたディレーニイ像と異なっていてピンと来なかった。
ゼラズニイがSFと神話の遭遇だとすれば、本書の前半のディレーニイはドロップアウト視点の散文とSFの融合だという気がした。ところが、後半ではそう単純でもなく、どう理解してよいのか混乱してしまった。
ディレーニイの最高傑作として「エンパイアスター」を押す声が高いので、機会があればそこまでは読んでみようかと思っているが‥。