☆ゲイトウェイを読む

bqsfgame2008-03-13

1977年のいわゆる「ニュー」ポールの一作。1979年のローカス賞受賞作でもある。
「マンプラス」、「ゲイトウェイ」、「JEM」、「ゲイトウェイ2」、「仮面戦争」と相次いでスペキュレイティブな作品を出したポールは当時の旋風だった。
ただ、生憎と軒並み当時のハヤカワSFノベルズのハードカバーで出版され、貧乏学生だったわたしは指を加えて眺めているだけだった。お金があっても、先にクラークやディックのハードカバーを買うのでポールまでは回らなかった。
今にしてようやく読むに至ったわけだが、読んでみて本当に不覚。こんなに良いとは思わなかった。謎のヒーチー人が残した超高速船を宝籤よろしく乗り込んでどこへ行くのか探検する冒険者たちと言う構図が先ず面白い。そして、その冒険に赴きながらいざ乗り込む段になってびびる主人公。
主人公が精神的に病んでいるという点では、山田正紀作品やヴァーリー作品に通じるところもなくはないのだが、作者の自己韜晦を映しているような読んでいて辛い感じがなく、物語のクライマックスに至って何故彼が病んでいるのか大筋のクライマックスと相俟ってきちんと説明されるので読後感はすっきりしている。
そして、本作はヒーチー人については最後まで何もわからないまま終わり、主人公はブラックホールに大きな忘れ物をして帰ってきてしまう。「ゲイトウェイ2」は、「青き事象の地平線の彼方に」というのが原題だったが、なるほどそういうことかという感じだ。
50年代SFの伝統を受け継いだ70年代のニュークラシックスと呼ぶにふさわしいバランスの良い傑作だと思った。「マンプラス」や「JEM」も読まなくては‥(^o^)