ACクラークの絶筆となりました。
フレデリック・ポールとの共作です。
クラークの絶筆と言えば、最初は「楽園の泉」でした。当時、SFマガジンに連載されましたが、軌道エレベーターを軸としつつも、神話との融合が試みられており、なかなか難解だった記憶があります。
それに対して、本書はずっと整理されました。
最終定理は、実は本書の主題ではありません。それは、主人公家族が世界的な変革の渦の中心に巻き込まれるようになったキッカケに過ぎません。
むしろ、スリランカへの軌道エレベーターの建設、それを利用した月でのオリンピック、太陽風帆船レースなどなどが中心軸です。また、世界文明への批評が強く打ち出されており、核兵器、地域紛争、宗教、国際連合など、様々なものへの辛口のコメントが随所に見られます。
作者も当方も年齢を経たせいか、共作という作業形式のせいか、かなり整理されて見通しの良い作品になっています。クラークの絶筆にふさわしい作品だと思います。