○我間違えるゆえに我ありを読む

bqsfgame2009-08-09

王銘エン九段の「これを伝えたい」シリーズの第2巻。
第1巻とは打って変わって、王九段が実戦で打った悪手を巡る軽妙洒脱な読み物になっている。
なぜそんな悪手を打ってしまったのかというメンタルな背景を紹介している。
後から問題図として出されれば間違えようのない場面でも間違える。その背景には、その時点での対局者心理の歪みのようなものがある。流れの中で形成を楽観していたり悲観していたり、前に打った手の顔を立てるために無理をしたりである。
特に面白かったのが張ウ本因坊(当時)との対局で相手側が王王座(当時)の美人を追いたがる傾向を利用して打っているとする「トム&ジェリー」の章だ。「美人を追わず」は苑田九段の名言の一つだが、なかなか難しい概念だ。本章は、その難しさを上手に描き出しているように思う。
と言っても苑田九段の原典を読んだことがないので、そちらも読んで見なくてはと思っている。