ショートゲームレビュー:ザ・グレートスペースレース

bqsfgame2009-09-01

「ザ・グレート・スペース・レース」は、ケンツァー社が2006年に発売したプログラミング方式の宇宙レースゲームです。これは同社が2002年に発売し好評だった「ザ・グレート・スペース・ドラッグ・レース」を拡充した新ゲームです。ドラッグレースの方は、2〜4人用の小型のゲームで、30分ほどでプレイできるものだったそうです。このスペースレースの方は、プレイ人数も3〜6人と拡大され、なにより大型のコースマップが用意されました。必然的にプレイ時間は長くなっており、2〜3時間コースのゲームになっています。
ゲームの基本的なメカニクスは、「ロボラリー」や往年の「ガンスリンガー」に通じるカードプロット方式となっています。
各プレイヤーは自身の宇宙船の速度に応じた枚数の手札を引いてきて、その中から速度に応じた枚数を秘密裡にプロットします。そして、全員が同時にオープンして実行していきます。
速度は1〜5まであり、毎ターンの開始時に加速1から減速2の範囲で速度を変更できます。
速度1のプレイヤーは、3枚の手札を引き、その中から1枚だけをプレイします。速度2なら、同じく3枚を引きますが、2枚をプレイできます。同様に速度が3なら、4枚を引いて3枚をプレイできます。最高速度の5であれば、5枚を引いて、5枚全てをプレイすることになります。
簡単なメカニクスですが、既にこの中にギミックが仕掛けられています。速度5になると、引いた手札をすべて使用しなければならないので、自分の進行方向の都合に合わないカードを引いてきてしまっても、それも全て使用しなければならないのです。逆に低速であればあるほど、不要なカードを回避して自分の思う通りに航行できます。つまり、速度が上がるとコントロールが難しくなると言うことが、自然に反映されているのです。
また、プレイヤーは自分の専用の航行ボードを持っていて、そこにある5つのボックスにカードを配置します。この時に速度5のプレイヤーは全部のボックスにカードを配置しますが、速度1だと3番目のボックスにしか配置しません。
そして実行はボックスの順に実施します。ですから、速度1の宇宙船が移動を実際に実行するのは、速度5の宇宙船の3枚目のカードと一緒のタイミングで実施することになります。同じターンに先に飛び出そうと思ったら、フルに加速してやる方が有利になっているのです。
このゲームの移動プロットのカードは、「ロボラリー」ほど移動単位を細分化されていません。「ロボラリー」では、1マス前進、90度ターンなどが、一枚のカードの単位となっていました。
それに対して「グレート・スペースレース」では、「3ヘクス前進+1ヘクスサイドターン+2ヘクス前進」と言ったように、かなりまとまった移動が1枚のカードで表現されています。このため、実際の移動のアクションでは、全然スピード感が違います。
「ロボラリー」では、ロボットたちがギクシャクと動いているカラクリ細工のようなイメージが支配的でした。それに対して「グレート・スペースレース」では、スペースレースらしいスピード感のある宇宙船の機動を満喫することができます。そのため、大型のレースコースを3周するという設定でも、それなりにプレイアブルな時間で収束するようになっています。
それだけのことなのですが、これによってゲームのプレイ感は大幅に軽く楽しくなっており、「ロボラリー」は泥沼化してしまうので苦手‥というプレイヤーでもグレートスペースレースなら楽しく遊ぶことができると思います。是非ともカードプロット式のレースゲームだから同じようなものだろうと決め付けずに遊んで見て欲しいものです。
「ロボラリー」はコースに過激な仕組が大量に組み込まれていて、これがプレイの進行を大幅に阻害していました。この点でも「グレート・スペースレース」は工夫されています。
ゲーム開始時には、これといった障害はボード上には存在していません。そうした障害物は、山札の中に仕込まれているイベントカードによって発生してくるのです。
その中でも特に悪質な大型イベントは、デックに1枚だけ組み込まれているメジャーイベントカードによって発生します。そうすると、別に用意されているメジャーイベントカードからカードを引いて様々なものが出てくるようになっています。
この仕組の良いところは二つあります。第一に、一回のレースに大量に凶悪イベントが発生してゲームが泥沼化することがないように発生頻度が抑えられています。第二に、それでいながら種々の凶悪イベントを用意することができるようになっています。
凶悪なメジャーイベントには、酸の雲、アステロイド群、ブラックホール、旧帝国の防衛兵器、スペースアメーバと言ったものが用意されています。名前を聞くと、だいたいの内容は想像が付くのではないかと思います。
また、こうした凶悪イベントが1つしか出てこないと決まっているのは物足りないという向きには、実はメジャーイベントの中に1枚だけ「大宇宙の恐怖の秘密」というカードが仕込んであって、これが出てしまうと3枚のメジャーイベントが同時発生するようになっています。そう滅多に起こることではありませんが、宇宙では禁止されないことは常に起こり得るのです(笑)。
また、宇宙船側の特別な装備も同じように山札の中に組み込まれた装備カードによって臨時に追加されるようになっています。一つの宇宙船は同時に二つまでしか装備を持てないようになっていて、強すぎる宇宙船が出ないようになっていますが、それでも有用な道具はかなりレースで威力を発揮します。ここらへんも、いかにも宇宙レースにありそうな道具立てが揃っています。
以上、「グレート・スペースレース」を誉めてきましたが、今一つな部分があります。それは、宇宙船同士が互いに妨害するための基本的な武装が機雷に限定されていることです。機雷は敷設してコースに置いていき、後続の宇宙船がそれに突入すると被害が出るようになっています。
つまり、先行する船から後続の船を攻撃するような使い方しかできないのです。
この兵器は、ただでさえ先行して他の宇宙船との衝突リスクが減って有利になった先行船がさらに有利になるように働きます。
もちろん次の周回まで残っていれば自分も後でツケを払うことにはなるのですが、それにしても先行する側の方が有利であるのは間違いありません。
その結果として、早めに差が開いてしまうと、逆転することは非常に難しくなっています。
最後になりましたが、宇宙船にはそれぞれのデザインがあり、船のシルエットも、特殊能力も違うようになっています。そういう意味では、このタイプのゲームにありそうなルールやガジェットは全部一通り揃っていると言って良いでしょう。
また、メーカーサイトには、フリーダウンロードの追加宇宙船タイプも用意されています。
拡張キットが出るという噂もあったようなのですが、今のところは実現していないようです。