エアキャブをソロプレイして感慨深く思ったことがあります。
エアキャブは言ってみれば米ソ冷戦時代のWW3ゲームの最後の末裔の一つなのです。1980年代の米ソの仮想WW3戦は、SPI時代には非常に多くのゲームが作られました。フルダ峡谷付近のセントラルフロントを題材にしたゲームでは、激突フルダ峡谷からセントラルフロントシリーズまで日本でも流通した物も少なくありません。この戦場を戦術級のスケールで詳細を見ることのできるゲームとしては、GDWのアサルトシリーズが有名です。エアキャブは、ヘリコプター戦と言う特殊な題材のように喧伝されていますが、列記とした同テーマの戦術級ゲームの最後の成果なのです。
この時期の戦場では、両軍のドクトリンの違いが良く話題に上りました。ソビエト軍は、WW2のドイツ軍の電撃戦を手本とした装甲部隊と自動車化歩兵の階梯投入による突破を志向していました。対するアメリカ軍は規模の小さい現地配備兵力でソビエトの突破を防ぐために陸空の連携で縦深防御を展開し敵の後方梯団の戦闘参加を防ぎ戦場の主導権を確保するエアランドバトルを志向していました。
このエアランドバトルドクトリンでは、上に述べた縦深性、主導権に加えて敏捷性、連携性が重要とされていました。縦深防御を見るにはエアキャブのスケールは大きすぎる嫌いがあるのですが、敏捷性と連携性で焦点となるのが攻撃ヘリコプターです。エアキャブは、このヘリコプターに焦点を当てた戦術級デザインな訳です。フリートシリーズでも知られるバルコスキーが同時代仮想戦に関する知見を集大成した作品であり、一見の価値があります。同じWEのエアアンドアーマーはもう少し小さなスケールですが、同様に戦術的作戦級の集大成的な作品となっています。これに戦闘規模のファイアーティームを加えたWEの現代戦三部作は、いずれもそのスケールでの同テーマの最終結論に近い作品になっていたのかなと今になって思います。
何度か述べていますが、WEはウォーゲームの冬の時代にあって良質のゲームを製作した仇花ですが、この三作品は特にその印象を強く感じさせます。
ヘリコプターファンはもちろん、そうでない現代戦ファンに広くエアキャブはプレイしてみて欲しい作品だと思います。