☆盤上の夜を読む

bqsfgame2013-03-20

2012年の日本SF大賞受賞作。
宮内悠介。
最新の受賞作をすぐに読むのは久しぶりのことです。
題材はボードゲームで、その意味では囲碁小説とかマージャン小説みたいなものです。SF的な要素はあるのですが、それほど強くありません。
冒頭の表題作と、巻末の書下ろしの「原爆の局」は、囲碁が題材です。手足のない女性が囲碁を通じて碁盤を自らの体の延長線と認識する表題作は一種壮絶です。それでいて透徹した雰囲気があり生臭くありません。原爆の局は有名な本因坊戦の原爆の局をメッセージとして、関係者が再会するエピローグ的な掌編です。
本書で圧巻はマージャンを題材とした「清められた卓」でしょう。マージャンが判る人は是非とも読んでみて欲しい作品です。ザックリ言えば、超能力で山を見ているとしか思えない一人を相手に、普通の能力の範囲で優秀な打ち手の三人が結託して対抗すると言うエピソードです。ネタは見てのお帰りですが、普通の三人が普通のマージャンで出来る技術の粋を駆使して戦うのが面白いのです。相手が山が見えているとしたら、ではそれに対して何が出来るのか???