二人対戦ゲームの索敵問題

千葉会で「フラットトップ」をやると言う話しが浮上している。古いゲーマーなら名前だけで震撼する有名な高難度ゲームだ。
索敵級空母戦ゲームの代表作の一つ。典型的な逆探知問題ゲームでもある。つまり共通のマップを両者が使用し、索敵を実施するユニットは盤上に姿を現す。相手は、そのユニットから検知される自軍情報を相手に報告する。
このシステムの最大の問題は、索敵するためには先ず自分が盤上に姿を現さねばならないことである。つまり、先に相手に確実な索敵情報を与えてしまうことである。これが逆探知問題と呼ばれる。
この問題の抜本的な解消策としては、審判を付け、両者は自軍の情報を審判に教え、審判がそれを判定して各々が得られる情報だけを報告してやれば良い。しかし、これは必然的にプレイ必要人数を一人増やすことになり、ただでさえ卓が立ちにくいウォーゲームでは現実的ではない。
審判なしで逆探知問題を緩和しようとしたのがツクダのコールマーカー方式である。これは探知側は探知を行うマーカーを盤上に配置するのだが、その時にダミーを混ぜて良い。これで自動的に確実な情報を与えることを防いでいる。被探知側は自分が探知される可能性のあるマーカーをチェックする。裏側を見て、ダミーだったら索敵能力はないので何も教えない。本物だったら、その索敵能力に応じた情報を返す。結果として、実際にコンタクトが生じた時にだけ、互いに情報が得られ、自動的な逆探知は発生しない。
これは論理的には非常に良い解決策で、ツクダは空母戦三部作を始め多くの作品に適用した。ところが、筆者は実際にプレイしたのだが、プレイアビリティはかなり低い。まず、探知マーカー配置時に、その配置手順を見ていると本物とダミーが判ってしまう。そのため、配置時には被探知側は後ろを向いているか席を離れなければならない。逆に被探知側がマーカーをチェックする時に、どのマーカーをチェックするか見られると一定の情報がバレてしまうので、今度は探知側が離席する必要がある。そんな訳で、プレイする会場の都合も出てくるし、それがクリアされてもプレイ時間は非常に長くなってしまう。
そんな訳で未だにボードゲームでは索敵系の本質的な解決策は見いだされていないと言うのが実状だと言える。
そんな中でも次善と思えるのは積み木システムで、これだと相手の兵力の存在はわかるが具体的な兵種や兵力はわからない。それだけでも結構なフォッグオブウォーで、これにダミーユニットが混じっていれば、かなり実戦に近い悩みは生み出せているだろう。空母戦ほどに秘匿性が高い戦いを再現できていないかも知れないが、南北戦争の作戦級くらいなら十分ではないかと思っている。
南北戦争でもジャクソンのヴァレーキャンペーンが典型だが、相手の現在位置の情報が得られずに苦戦する事例は多く、かなりフォッグオブウォーがあり、情報と推理が重要だったと考える。その意味では、ダミーを含んだ積み木システムの「ボビー・リー」や、積み木ではないがダミーを含んでユニットを隠匿面で運用するCOAのシリーズ(リーテイクスコマンド、オータムオブグローリー)などは良いシミュレーションだと思う。
そうした観点から未見だが期待できそうなものとして、Forged in fire, Shenandoah がある。