昨日の続きだが、「ドルイド」と「ブーディカ」では、ゲームのメインエンジンであるアクションポイントの配布方法が変わりました。
「ドルイド」では毎ターン、1個のチットを引き、それに書かれたポイントを受け取りました。凄かったのは、蛮族側には「0」と言うチットがあって、これを引くとそのターンは文字通りに何もできませんでした。しかも、チットは毎ターン戻して全部を混ぜて引くので、運が悪いと連続して「0」を引くことがありました。特にゲーム序盤の反乱期にこれを食ってしまうと、ゲームが成立しなくなってしまいます。これは「ドルイド」の競技ゲームとしての大きな欠陥でした。
「ブーディカ」では、1−3ポイントの記載されたカードを6−10枚引くので、一部、ポイントのないイベントカードはあるにしても、基本的に4ポイントくらいが保証されていて、多くても12ポイントくらいまでと言う感じでしょうか。これでも3倍違うので激しいと言えば激しいですが、前作よりおとなしくなったものです。その意味で、競技ゲームとして運に左右されずにプレイヤーの力量で競えるようになり大きく改善したと思います。
ゲームの展開としては、イケニ族とトリノヴァンテス族の2部族だけで蜂起して始まります。そして、将軍に当るドルイドを各地の部族に派遣して蜂起を促すのです。ローマ軍はゲーム開始時に最前線にいるのは1個レギオンだけで、こちらも動員することで追加の2個レギオンが参入してくるようになっています。しかし、ゲーム前半のイニシアチブはブーディカ側にあります。かくて、序盤はブーディカ陣営がローマの植民都市を襲って焼打ちを掛けて先行し、これをローマ正規軍が鎮圧していくと言う展開になります。
筆者がこのゲームを好きな理由の一つとして、ローマレギオンの質的な強さを表現できている作戦級ゲームは、「ドルイド」くらいしかなかったと言うことがあります。戦術級ゲームでは、GBOHシリーズの「SPQR」がローマ軍の強さを申し分なく説明してくれるようになりましたが、なかなか作戦級では良いゲームがありません。本当は、「インペリウムローマニウム2」あたりが役目を果たしてくれると良かったのですが、プレイアビリティ面で敷居が高すぎる嫌いがあります。
このゲームで実際に戦闘をしてみると、蛮族の額面戦力が高く、実はローマレギオンとでも往々にして1対1くらいの戦闘になることに驚きます。ところが、戦闘はラウンド制で、一方が撤退を選ぶまで続きます。これが曲者です。戦力に差はなくても、実はステップ数に大きな差があるのです。ローマレギオンは補助兵も含めて、大体12ユニットくらいで50戦力くらい。蛮族は額面戦力が大きいので6ユニットくらいで同じくらいの戦力になります。ところが、ユニット数が違うと言うことはステップ数が全然違うので、ローマ軍は倍くらいの打たれ強さがあります。両者ともに2ステップロスと言っても、ローマ軍は3−4戦力の被害ですが、蛮族は6−10戦力くらいの被害になってしまいます。このため、3ラウンドくらい戦うと、ローマ軍はまだ40戦力くらいあるのに、蛮族は20戦力くらいになってしまいます。そして、戦闘比が2:1に傾くと、蛮族側の被害は倍に加速して、あっと言う間に崩壊してしまうのです。
もう一つ問題があって、撤退を選ぶことはできますが、ローマ軍は一体となって退却し常にスタックを崩しません。ところが、蛮族は部族ごとに自分の集落へ向かって撤退するので、すぐにバラバラになってしまいます。このゲームでは、戦力に関係なく1スタックを機動するのに1APが必要で、スタックがバラバラになってしまうと、急速に活動効率が低下します。かくて蛮族側は、戦闘になると脆く、また一旦、敗走してしまうと再び秩序だった反撃を展開できるように立ち直ることが非常に難しくなっています。
このため、ゲーム序盤でそこらじゅうで蜂起の火の手が上がって圧倒的に不利に見えても、少数スタックながら精鋭のローマレギオンは事態を収拾できるようになっています。この辺りの「ローマ正規軍の強さ」と言うのが、本ゲームの最大の見所です。古代世界においてローマ正規軍が突出して強かったと言うことは事実として聞いてはいても、それをボードゲームで痛感できるものは実は意外にありません。その意味で、本作は古代ローマ戦ファンのウォーゲーマーにはマストアイテムと言っても良いと思っています。
と言うことで贔屓の題材の贔屓のゲームだけに力が入りすぎましたが、そんなに間違ったことは言っていないと思うので、興味のある方は是非とも買い逃さないようにしてください。