昨年夏の辻村深月作品。
本屋で平積みになっているのを見て図書館で予約しましたが、ようやく順番が来ました‥(^_^;
アニメーション業界を舞台にした「お仕事小説」と言う帯です。と言っても池井戸作品みたいな意味でのお仕事小説ではなく、要するに「ミステリーではありませんよ」くらいの意味です。事件性がなく、明るく楽しく最後まで読めます。これは、売れる訳です。
第1章は、天才と呼ばれる一方で扱いにくいと言われる監督の10年ぶりの話題作を担当する女性プロデューサー、香屋子。予想を上回る監督の天衣無縫ぶり(と言うか無責任ぶり)に翻弄されます。
第2章は、同じクールの対抗馬作品を初監督する女性アニメ監督、斎藤瞳。作品をカネにすることに長けている敏腕プロデューサーと組みますが、自分が作りたいものを作るために衝突を繰り返します。
第3章は、両作品で神原画を書いて評判になった新潟の小オフィス所属の女性アニメーター、和奈。斎藤監督の作品、サバクの舞台が自身の住む新潟の小都市だったことから、町興しの企画に関わることになり苦手な人間関係に巻き込まれていきます。
視点をどんどん移り変わりながらも、春クールのアニメ第1位を競い合うという立場で、アニメーションを盛り上げるという立場で、時に対立し、時に協力して物語は進んでいきます。
いつものように30前後になってしまった女子たちの内心を緻密にリーダビリティ高く綴っていて、辻村作品の代表作になったのではないかと思います。事件性がなく、外連味なく読めるので、広くお薦めできる爽快作品です。
既に、次の作品も刊行されていますが、辻村美月の快進撃は続きそうです‥(^o^)