ハヤカワの銀背です。アンダースン、シルヴァーバーグと来て、これが取りあえず最後になります。
ジェイムズ・ブリッシュの連作長編ですが、何と言っても世評が高いのは第三部の表面張力です。ローカスのオールタイムベスト中編アンケートでも21位にランクインしています。
また、中村融さんのこちらでも言及されていて、筆者はこれで知りました。
http://www.webmysteries.jp/sf/nakamura1411.html
言ってみればテラフォーミングする代わりに生体改造して種々の惑星へと広がっていく地球人の姿を描いた連作。表面張力は、サブミリメートルの水棲生物として生存を選択せざるを得なかった難破船の子孫たちが主人公。彼らが水中を制圧する文明を築いて、再び地上へと復帰する物語。その時に表面張力が大きな障害となる訳なのですが、これは凄いことを考えたものです。世代宇宙船テーマに似た年代記のテイストと、独特の生態学の描写がブレンドされた傑作です。
ただ、第1、2部の訳文の読みにくさが険しいので要注意。お題は見ての御帰りとは行きませんから頑張って第3部まで辿り着いてください。
改訳の上、文庫採録を望みます。無限軌道、宇宙知性チョッキー、ボロコーヴはミムジイなどと共に実現して欲しいものです。