戦略的な選択肢とバランス

筆者はシナリオ1(1862年キャンペーン)をプレイしました。プレイして思ったのは、侵攻してきた南軍の戦略目標の選択肢と、全体的なゲームバランスが上手く設定されていることです。
シナリオ1は、北部に侵入した南軍が、北軍の先遣隊によってポトマック川を越える補給線を絶たれた状況から始まります。このため、南軍はいくつかのことを秤にかけて行動を決めねばなりません。
第一は、ポトマック川の補給線の回復です。このために、一旦、一部の部隊を後退させて落された橋を修理するか、橋を占拠している北軍を撃破せねばなりません。
第二は、勝利に必要な9VPを確保するために、戦略目標を獲得することです。一番、大きな目標はハリスバーグ方面で、ハリスバーグ占領で2点、ハリスバーグ橋奪取で2点、ハリスバーグ/バルチモア間の鉄道切断で2点の合計6点が得られます。これ以外の選択肢として、騎兵による鉄道切断に徹しても、ハリスバーグ/バルチモア間切断で2点、バルチモア/ワシントン間切断で3点の5点が得られます。それ以外には、盤上に広く散在している都市の占拠で、各1、2点が得られます。大雑把にゲティスバーグ方面までを制圧すると4〜5点が得られます。
ざっくり言うと、ポトマック川補給線、ハリスバーグ、鉄道切断の3つから2つを選ぶことになるでしょう。
南軍は機動力が高いので、目標を決めさえすれば、進軍は容易です。しかしながら、大きな問題として、兵力では圧倒的に見劣りします。また、敵地で行動しているので、損耗チェックによる自然摩耗が無視できないほどあります。
本作では都市の占領には10戦力、鉄道の切断には5戦力が必要なので、自然摩耗で必要兵力を割ってしまうと企図が破綻してしまいます。かと言って、全ての任務に余裕を持った兵力を送り込むような人的資源はないのです。この辺り、非常に悩ましい。ただ、悩ましいとは言っても、南軍は機動力に富むので、展開に応じて作戦を臨機応変に修正する余地があるのが大きな利点です。
一方の北軍は、機動が鈍いのが最大の難点です。マクレランが、3、4ポイントのコマンドポイントを得た時に一気に動きますが、1ポイントとかだと、伝達ロスで最前線の指揮官は0コマンドポイントになってしまいます。そうすると、火急の状況で敵の眼前でフリーズしてしまうのです。また、兵力的には圧倒的ですが、本作では戦闘時に攻撃側は存在兵力の何%を実戦投入できるかをコミットメントチェックします。能力1のリーやジャクソンは安定して90%以上の兵力を投入できますが、マクレランクラスになると30〜50%くらいの兵力投入しかできません。ですので、兵力はたくさん存在していて防御的には撃たれ強くとも攻撃では意外にパンチ力がありません。機動が不安定なのに加えて、戦闘でも投入意思決定が鈍いので、思ったような作戦を実施できません。そんな、動けない、戦えない、愚鈍な北軍ですが、救いはゲームの勝利条件が南軍に敵地での機動と攻撃を要求していることです。ですから、敵の作戦を早期に看破して適切な兵力を守るべき拠点に送り込めば、南軍は容易に北軍を撃破できません。そのために、北軍司令官は鋭い洞察力と早期の意思決定を要求されるのです。