☆折り畳み北京を読む

SFが読みたい2019の海外1位です。図書館。

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これは抜群に面白いアンソロジーです。「SFが読みたい!」にも当りがあるのだと知って、少しですが安心しました。

1970年代の日本SF、1940年代のアメリカSFのようなエネルギッシュな作品群です。

特に以下の、ややボリュームのある作品が面白かったです。

「円」は、古代中国の時代に、人間をゲート素子に使って円周率を計算する話です。それだけのことなのですが、それを戦国時代に持ってきて、他国のスパイによる陰謀とした所に捻りがあります。

「折りたたみ北京」は、ヒューゴー賞受賞作だそうです。なるほど面白い。ルービックキューブのように同じ空間を共有する別の町が時間帯ごとに入れ替わる話し。その異なる町を跨ったロミオとジュリエット譚でメッセンジャーを務める老人の視点で描きます。プリーストの「逆転世界」も想像力による力技ですが、同じくらい凄い!

「鼠年」は、遺伝子改造された一種の生物兵器である鼠を駆逐する兵士たちの生活を描いた作品です。「終わりなき戦い」、「わが友なる敵」と近い路線です。ただ、アメリカのそれは、ヴェトナム反戦と強く結びついているのに対して、本作は技術先進国からの侵略という絵姿を持っています。

「沈黙都市」は、オーウェルの「1984年」のオマージュと思われるディストピア小説。使用禁止語が増えていくネット社会の行きつく先をダークに想像した中編です。

このアンソロジーを読むと、もっと中国SFが訳されて欲しいなと思います。ケン・リュウの新作も出たようなので読まなくては。