×わが友なる敵を読む

bqsfgame2013-03-02

バリー・B・ロングイヤー。
表題作は1980年のヒューゴー、ネビュラ、ローカスの三賞を独占した話題作。すぐに当時のSF宝石に訳出され、日本でも期待の大型新人だった。短編集が文庫で発売されたが、その後は泣かず飛ばず。彗星のように現れ、そして消えた人だ。
今頃になって読んだが、うーん、これは無理もない。
典型的なミリタリーSF。ジェイレンと地球防衛軍の2作品には見るべきところは少ない。従軍経験をベースにした軍隊描写は迫力なくもない。しかし、レム風に言えば「宇宙は銀河規模に拡大したヴェトナム戦争ではない」のだ。
表題作は無人島漂着状態の敵エイリアンと二人暮らしを描いた中編。戦争状態の2種族の間に立つ個人の交流を描き、その顛末は三賞独占に見合う程度に泣かせる。本当にコレだけの人だったのだなとしみじみ思う。
未開の惑星は、全個体がメスで生まれてきて生存競争に勝ち残ったものだけがオスに転換してハーレムを築くエイリアンが登場。この性質を利用して、エイリアンを社会的に被支配下に置けばオスに転換するものが無くなり滅びるはずと言う人類の陰謀を描く。これはちょっと面白い。宇宙が銀河規模に拡大したヴェトナム戦争ではないところが良い。