Eテレです。
このシリーズは、なかなか興味深い題材が多いです。と言っても、番組宣伝で見掛けた時に録画視聴する程度なのですが。
今回は、アラン・チューリングです。
チューリングの第一の側面は、エニグマ暗号を解読した男です。第二次大戦中にナチスが絶対解読不能と喧伝した換字式暗号の最高峰。これを解読するのは連合軍の大命題でした。
第二次欧州大戦は、東部戦線、西部戦線、北アフリカ戦線、大西洋などで戦われましたが、もっとも重要で熾烈な戦いが行われ、そしてほとんど誰にも知られなかったのが暗号戦線です。
暗号戦線は、その特性故に秘密裏に戦われ、そこでの戦果は全くと言って良い程、戦後も世に出ませんでした。サイモン・シンの「暗号解読」は、本件以外も広く暗号技術を扱った傑作ですが、これを読むまで筆者も暗号戦線を過小評価していました。
天才数学少年だったチューリングは、ヘッドハンティングで暗号学校に入り、大変な戦果を挙げました。しかし、これはウルトラ機密とされ、長く世に出ませんでした。
戦後に本来の研究であった万能計算機開発に戻りますが、人間嫌いだった彼は周囲との軋轢が絶えず成果を挙げきれませんでした。大戦の英雄と言う肩書が明らかになっていたなら彼の人生は違っていたし、コンピューター技術の発展も違っていたかも知れません。
知能の本質はアウトプットであると看破し、チューリングテストを提案した彼が、人工知能が急進化する今になって再評価されるようになったのは喜ぶべきことと思いました。
余談ですが、終戦時に大量捕獲したエニグマを、英国は植民地諸国に「解読できない暗号機」として売りつけて稼ぎ、さらにその暗号を解読して動向をスパイしていたというのは初耳でした。それにしても、植民地主義時代のイギリスって、本当にひどい国ですね。