○アメリカの壁を読む

小松左京短編by中村セレクションも、ついにラス前まで来てしまいました。

今回は「アメリカの壁」所収の「眠りと旅と夢」です。

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これはまったく知らない作品でしたが、なるほどさすがの中村融セレクションです。

アンデスの東斜面で発見された3つのミイラを入れた棺。工事中に1個は破損してしまったが、状態良く掘り出せた2個目を開けると、その瞬間の動画に確かにミイラの瞳がが驚愕したかのように動くのが観察された。ミイラを分析すると、ミイラの下半身は千年前に死んだようだが上半身はもっと最近まで生きていたらしい。さらに首から上はごく最近まで生きており、本当に開放される瞬間まで生きていた可能性も。

これを踏まえて、工事チームは万難を排して、中のミイラが生きている状態のままで最後の棺を開けることを試み始めます‥。

と言うような、一種のサルベージもので、古代文明テーマで、若干だが超常現象も入っている長めの短編。

これはもっと広く知られて語らているべき作品と思いました。

表題作の「アメリカの壁」は、バミューダトライアングル技術を解明したアメリカが、アメリカ、カナダ、メキシコ北部を、地球の他の部分から分離して孤立の道を選ぶという思考実験中編。「物体O」と違って自発的に孤絶する話しで、その政治姿勢をもってしてトランプ大統領を予言したとしますが、正直に言ってそれほど予言的な意味はないように思いました。

巻末の「ハイネックの女」は、女シリーズの最終作だそう。隣の冴えない男の所に美人が同棲してきた。しかし、どうも鶴の恩返しのように秘密の多い女で‥。

現代に生き残る妖怪奇譚となっていて、小松先生がなんでも書けることを改めて感じさせられました。

 

次は大トリ、「ゴルディアスの結び目」です。