〇火星の遺跡を読む

久しぶりのJPホーガンです。

かなり良かったのですが、少し登場人物が多くて雑然としているので☆にしませんでした。

一言でいうと、かなり「ステンレススチールラット」に近いテイストです。

冒頭は火星で研究されているテレポート技術。

この技術は実際は転送ではなく、人間をデータ分解して転送先で再構成するものでした。なので、発信元にオリジナルの人間が残ってしまいます。無事に再構成が終わるとオリジナルを跡形もなく消去してしまうのです。

こうした「テレポートによって増殖する」話としては、ディッシュの「虚像のエコー」もありましたが、同じような道義的な問題が議論の焦点となります。

別名ナイトを持つ主人公の問題解決人キーラン・セインは、この殺されそうになるオリジナルを助けて彼がもらうべきである研究成功報酬を企業から巻き上げることに協力します。

第二部では、地球のピラミッドに似た巨石遺跡が火星にも埋まっていることが発見され、これを埋殺しようとする企業と戦います。この企業が第一部で戦ったのと同じ企業だという因縁です。

ホーガンと言うと、処女長編の「星を継ぐもの」があまりに極上のサイエンスミステリーだったので、そのイメージを期待してしまいます。しかし、「プロテウスオペレーション」は歴史改変ミッションサスペンスでしたし、本書はSSRに似たネオ・スペースオペラです。

後書を読むと、もともとホーガンは冒険小説志向を持っていたようで、これは本人の意図に沿った作品なのですね。出来も悪くありません。これがハリスンの書いたものだと言われたら文句なしに☆でしょう。

ただ、ホーガンだと、科学的にもっとごついものを期待してしまうので、ちょっとだけ評価がズレてしまうのです。