火神を盗めを読む

「あなたもSF作家になれるわけではない」からの発掘本です。
ノンノヴェルの山田正紀はゲーム小説的なものが多く、「謀殺のチェスゲーム」はその代表的な傑作でした。

本書はその次にノンノヴェルに山田正紀が書いた作品です。
火神(アグニ)とは、中印国境に建つ難攻不落(?)の原子力発電所です。これにCIA極右派が爆弾を仕掛けたことを知ってしまった日本のエンジニアが命を狙われ、生き残るために当該爆弾の撤去に挑むというものです。
チェスゲームもそうですが、アマチュアが暴力のプロに挑むという無謀な計画で、絶対この立場にはなりたくないものだと思います。
しかし主人公は会社を脅して潜入チームを組織しますが、会社はいなくなっても良い人間ばかりをあてがいます。お目付け役で社長お抱えの荒事士が参加し、彼だけは戦力になりそうなのですが最初に事故死してしまいます。まぁ、この展開のお約束みたいなものですが。
プロなら絶対に真剣に考えないようなプランを実行に移してしまい、それが故にプロの盲点を突くこととなって奇跡的に突破に成功するという作りです。
感圧地雷原をどうやって超えるか、対熱感知レーダーをどうやって欺くかなど、確かにそうだけど無理筋だよねと思うような手段が次々に実行に移されます。
奇想天外な素人作戦が次々と成功する中、最後の最後に爆弾があるべきところにはないことが発見され、その謎解きが語呂合わせでされるのには唖然とします。
そして、非常に意外なことに「アマチュアメンバー全員は無事に日本へ帰国」します。「恐怖の報酬」でも書きましたが、これだけ頑張ったのだから誰かは生き残って欲しいと思って読んでいたので、本当に安堵しました。