プラッツエン1805を対戦プレイする1(総論)

 DRAGOONさんから対戦応募があり応じて実現しました。

 アウステルリッツの戦いの中で焦点となったプラッツエン高地の戦いを扱ったグランドタクティカルコンバットゲーム。
 赤羽駅からバスで前野町へ。
 事前にルールをいただいて読んでは行きましたが、グランドタクティカルと言うだけのことはあって、精密戦術級なので細かいルールが多すぎて全然頭に入りきりません。これで大丈夫かと思いながらも会場へ。
 実際にやってみると、稼働スタック数が少ないこともあってプレイ不能などと言うことはありませんでした。
 しかし、いろいろと問題が多かったので、折角ご紹介いただいたゲームではありますが、指摘しておきます。

1:先ず本ゲーム特有の概念がいろいろあるので、それぞれの用語はきちんと定義して欲しい
 プレイ中に判明した最大のものとしては、「突撃」があります。ナポレオニックで「charge」と言えば誰しも騎兵突撃のことと思いますが、本ゲームでは歩兵も含めて攻撃態勢(後述)となって敵に接敵する移動をして白兵戦を実施すること全般を言うようです。これが判らなくて、騎兵突撃のルールはどこに書いてあるのだろうと二人で探すこと暫し。

2:プレイエイドの完成度が低い
 前述の態勢が本ゲーム特有の概念であり、またコア部分です。敵から8ヘクス以内にいる友軍スタックは友軍ターンの初めの方(中ほどなのですが選択ルールを使用しないと実質的には初めの方)で態勢を判定します。攻撃/保持/撤退の3つの結果があり、ユニットの練度によってコラムが変わります。練度3のユニットは60%くらい攻撃ですが、練度2でもかなり日和見(保持が出やすい)になります。
 で、それぞれの態勢によってできることが違います。これを見やすい表にしてくれれば良いのに、ルール本文を見ないと判りません。すごく不親切です。
 で、「攻撃」になると敵に接近して突撃したり、射撃を仕掛けたり、まぁ普通に運用できます。
ところが、「保持」になると移動はできますが敵にまったく接近できません。複数の方向に敵がいると事実上まったく移動できなくなります。射撃は中止できますが(中止できることの意義は後述)開始できません。
 撤退になると文字通り撤退で、後方(戦術級ゲームなのでユニットの向きがあります)に向かって慎重な移動力で移動しなければなりません。
 移動力には3種類があって、高速は攻撃態勢で突撃する時に使用します、通常は通常使用する移動力です、慎重(slow)は撤退や退却時に使用しその全移動力を後方へ向けて使用しなければなりません。
3:プレイヤーは大事なことは何も決められない
 デザイナーは、「プレイヤーは大雑把な命令はできますが、実際に銃を撃つかどうかなどは銃を持った兵士が決めることなのです」と書いています。言いたいことは判りますし、そういうデザインの方向性があっても良いと思います。
 しかし、実際に出来上ったゲームは逆になっています。
つまり、「ざっくりした作戦は態勢決定表で決まってしまい、プレイヤーは細かい移動経路や、ユニットの方向などの些末なことしか決められません」。で、そういうゲームが面白いかと言われると、さっぱりです。
 まぁ、中間管理職の悩みを絵に描いたようなデザインとも言え、これはこれで正しいシミュレーションかとも思いますが、もう一度プレイしたいかと尋ねられれば、NOと言わざるを得ません。
4:いらいらするのはそれだけではない
 態勢ルールと態勢表の問題が一番大きいと思うのですが、この他にもLOSのルールにおける高度の取り扱いのルールがASLのように合理的かつクリアなものになっていないのもイラッとします。このルールで突然、マスケッティア射撃という概念が出てきて、これは歩兵による小銃射撃だろうと判ります。ところが、同じような概念で「non-howitzer」射撃なる用語が登場します。非・砲兵射撃だと思うので、マスケッティア射撃と同じ物だと判断したのですが、実は良く判りません。そもそも砲兵という用語があるのに、どうして突然、未定義の「howitzer」が出てくるのか判りません。さらにややこしいことに、砲兵はボールと榴弾(canister)を発射できるので、DRAGOONさんはhowitzerとはボール砲撃のことを示す用語ではと言われて、これを肯定も否定もできませんでした。
 帰宅してhowitzerを検索したら榴弾砲のことを意味していた時代があるようなので、DRAGOONさんの見解が正しいのかも知れません。
 話しが反れましたが、ナポレオニックでは騎兵突撃するとコントロールが効かなくなるというのは良く見かけます。本ゲームでは歩兵が射撃を始めると、簡単には止められません。前述の保持態勢や撤退になると止められるのですが、攻撃態勢になってしまうと、前回射撃したユニットは判定を行って勝手に同じ目標を射撃し続けたりします。
 と言うことで、射撃したかどうかを示すマーカーが用意されていますが、それだけでなく誰に射撃したかを示すマーカーも欲しいのですが用意されていません。
 厳しく言えば、ルール全般、コンポーネントデザイン全般について、プレイした時にプレイヤーがどういう不便を感じるかということを推定する能力が欠如しているのではないかと思います。
 ただ、「ユニットはプレイヤーが思う通りには動かないんだよ」というジレンマを提示したいという意図は判ります。あまり嬉しくない形ではありますが目的は一定程度達成されているので、完全な失敗作とは言えないと思います。まぁ、最大限に擁護してもこのくらいのことしか言えないでしょうか。