南極大陸を読む その2

 下巻からの引用です。

p97

 彼のような男性は血気にはやり、往々にして無茶な歩きをする。自分の体力は限界がないと思い込むのだ。そしていちばん早く、落伍する。ペースづくりには、自己修養が欠かせなかった。一般に、筋骨隆々たる男性は、極端な長距離は不得手である。栄養補給の必要な筋肉がありすぎて、ためこんだ炭水化物を消費しきったあとのからだには、燃焼にまわす脂肪がほとんどない。

p100

 彼女はここで、親の冒険のまぎれもない特徴をひとつ見つけた。すなわち、冒険に出会ったところで、まったく楽しくなんかないということ。

p108

「じきにロバーツ・マッシフが地平線にあらわれますよもうちょっとですからね」

 石油基地までは、少なくともあと25キロはある。彼女は過去に幾度となく、ごまかしの「もうちょっと」をいってきたが、ここまで長い距離に使うのははじめてだ。

p156

「ブレーキは?」

「ブレーキはないっ」

「ないですって!」

「ボートとおんなじだよ。エンジンをきって減速する」

p168

 もちろん、ガイドのなかにはアマチュアをエヴェレストに連れていく者もいるし、そこで遭難する話もよくきく。

p169

 彼女は急いで左に方向転換した。岩石の道に出るのだ。ふりかえって、自分についてくるよう後続に手をふる。

p190

ライギョダマシって?」かわりにヴァルはそう質問した。南極にすむ巨大魚については、話にはきいたことがあっても実物は見たことがない。

p195

「わたしたちはたくさんのグループに分かれていますが、一部はとても常識的です。原理派、実利派と呼んでいますが、原理派のほうは他国からの援助なしに、イヌイットサーミのやり方で衣食住をまかないたい者たちのことです。実利派は呼び名どおり実利的で、他国の最新のものは何でも、南極で利用できるかどうか試そうとする者です。」

p232

‥ラーズは満載喫水線についてよく話してくれます。このことば、ご存知ですか? 荷を満載した船と水面がつくる線で、ラーズがいうには、世界は人口の重みに耐えかねて、この喫水線より下に沈んでしまったんですって。

p297

そこで環境を破壊しないことが技術的に可能だと判断されたら、貴重な資源、とくにメタンハイドレートを新しい方法で掘削しようと、満場一致で決定した。これに対しては、北半球の環境保護団体から抗議があったが、そんな抗議をしてくる国は、南極部会に所属する国の5倍から20倍も世界資源を消費しているんだ。

p303

 わたしたちの生活は民主的です。できるかぎり、その土地に頼って生きること、ただし環境を破壊せずに生きることが大切と考えています。

p342

 毛主席のおかげもあって、わたしたちは世界の他の地域の人びとよりいくらか早く、体系化された共同社会をスタートさせ、二十一世紀はそれがわたしたちの大きな力になる、ということです。

p391

名作劇場」から抜けでてきた人びと。エイヴォン川のとなりには、コンクリートで永遠の姿を保つスコット像。その衣類は、いまのウェイドの目には信じられないほどお粗末だった。台座には、「生きぬき、探求し、発見し、あきらめぬ」と書いてある。