×ある日どこかでを読む

bqsfgame2005-10-13

リチャード・マシスン世界幻想文学大賞受賞作。
率直な感想だが、主人公の鬱陶しい感情描写に辟易してやっと読み終えたというところ。妄執と優柔の間を往復する男の心理描写というのは個人的には全く好かない。同じようなことを以前に思ったのがそう言えば「夏への扉」だったかも知れない。しかし、このどちらも世評は非常に高い訳だから、こういうのを是とする人の方が世では多数派だということなのだろう‥(^_^;
たとえ少数意見であろうとも、残念ながら主観的にノーだったので率直に此処ではそう書いて終わりにしたい。
世界幻想文学大賞受賞作を今年はいくつも読んできたが、ハズレだと思ったのは今回が初めて。そもそもこの賞へのリスペクトがなければ、途中で読むのを辞めて古本屋へ売りに出していたかも知れない。マシスンの他の作品を手に取ることもこれでほとんどなくなったかなという気がする。
冷静に考えたとき450ページの大作にしては中身はほとんどなく、余命いくばくもない男性が旅先のホテルで初めてもう死んでいる女優の写真に恋に落ち、その恋のために時間線を遡って出会い、どうしたものか彼女も運命的な出会いを感じてアッという間に恋に落ち、それも束の間で現代に帰ってくるという話しである。100ページくらいの中篇にまとまっていて、時間旅行にもっとロジックがあって、どこかにタイムトラベルならではの伏線が上手く張ってあったりしたら傑作かも知れない。プリーストの「蒼ざめた逍遥」みたいに。