○伝道の書に捧げる薔薇を読む

bqsfgame2006-02-13

ゼラズニイの初期短編集。
実は短編集としては初読。ゼラズニイの短編と言うと、ウォルハイム&カーのワールドベストSFのアンソロジーに入った「フロストとベータ」と「12月の鍵」が圧倒的に素晴らしく、60年代のゼラズニイの短編は素晴らしかった‥というイメージが定着している。
しかし、改めて今になって本短編集を読んで見ると、それほどには感心しなかった。いくつか意外な発見があって、
1)意外なほど「しっかりSF」している
2)単純な構図のストーリーをしっかり読ませている
「12月の鍵」や「この死すべき山」は、SFならではのシチュエーションの設定が非常に際立っている。また、「その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯」は太公望SFだし、「この死すべき山」は登山SFとも言うべき作りになっていて、その構図での非常にオーソドックスな進行をしていく。
全体として読んだとき、上述した2本の出来栄えから少しゼラズニイ短編に対して過剰なイメージを持っていたかな‥という修整をした感じ。
集中では、やはり「12月の鍵」が素晴らしい。SFで神話で、そしてとても泣かせる素晴らしいストーリーだと思う。表題作は個人的にはそれほど好きではない。むしろ、「悪魔の車」の方がエリスン的なヴァイオレンス味も加えたゼラズニイらしい神話的なテイストも盛った傑作だと思った。ショートショートは全般的にそれほど評価できないと思うが、「聖なる狂気」は良く出来ていてちょっと泣かせる。