☆「復讐の女神」「フロストとベータ」を読む

bqsfgame2006-02-14

『伝道の書に捧げる薔薇』を読み終えたので、もう一冊のゼラズニイの短編集『キャメロット最後の守護者』も読みたいものだとネットを探したのだが、オークションなどでも高騰している模様。
世評を見ると、どうやら「復讐の女神」と「フロストとベータ」が集中のベストらしいので、取り合えず我が家のアンソロジーに入っている両方を読んで良しとすることにした。
「復讐の女神」が収録されているのは、中村&山岸編の20世紀SFの60年代編。「フロストとベータ」が収録されているのはウォルハイム&カー編のワールズベストSFの1967。どちらもシリーズアンソロジーだが、シリーズ中でもベストの集がこのあたりらしい。特に「ワールズベスト1967」は表題作が、映画「トータルリコール」の原作短編「追憶売ります」。そして、「12月の鍵」と「フロストとベータ」というゼラズニイの2大傑作短編を収録。さらに最近突然国書刊行会から短編集が出てビックリさせられたデヴィッドスンの「どんがらがん」も入っている。ボブ・ショウのスローガラスの原典短編「去りにし日々の光」や、ムアコックの問題作「この人を見よ」も。なんと美味しいアンソロジーか。
さて、個々の作品に話しを戻すが、「復讐の女神」は確かに面白いのだが個人的には「フロストとベータ」や「12月の鍵」よりワンランク落ちると思う。この作品の主人公は、実は敵役のヴィクター・コーゴなのではないかと思う。横暴な人類に愛想を尽かして人類を裏切った心臓のない男。その男を狩る三人の異形の狩人たち。コーゴが討たれてしまうシーンは悲しく、その目的を達した三人の成功にはとても喜べない読後感が残る。
「フロストとベータ」はほぼ30年ぶりに読んだが、今読んでも素晴らしいと思った。人類が滅びてしまった後、地球再生の使命だけが存続しているロボットだけ生き残った地球。そこでの「人間」探索の物語である。粗筋に書いてしまうと、「しっかりSF」「単純な構成をしっかり読ませている」という昨日と同じ分析ができてしまうのだが、その「しっかり読ませている」ところのタッチやテイストがゼラズニイならではで誰にも真似ができない気がする。SFで、神話なのがゼラズニイの60年代のテイスト。さらにヒロイックファンタジーの流れが入ってきたのが70年代以降という分析は粗雑に過ぎるか?