☆警士の剣を読む

bqsfgame2007-01-18

ジーン・ウルフの「新しい太陽の書」四部作、第三巻。
ネタバレになるが粗筋を。
セヴェリアンはついにスラックスの街に辿り着き、そこで警士として働いている。スラックスは、川の源流にほど近いところに位置し、上流側は瀑布に下流側は壁に遮られている。街は河によって削られた渓谷の両壁面に位置しており、川面に近い低い位置ほど平坦で高級な地域、急峻な高い位置ほど貧しい地域となっている。土地は独裁者の権威を代表する執政官アブディーススにより統治されている。
この地について仕事に励んでいる主人公だったが、相方であるドルカスは最近は塞ぎ込んでいる。セヴェリアンの仕事の陰惨な面に愛想が尽きたのかと思い弁護してみたりもするが、実は彼女は別の悩みを抱えていた。つまり、彼女は実はセヴェリアンが持っていた調停者の鉤爪の作用で水の底に沈んでいた死者だったものが甦った存在なのではないかという悩みだった。ある日、ドルカスは金属の玉を吐き出し、これは実は死体を水に沈め浮かなくするために飲ませるものだと聞き、己の疑いを確信する。そして、自分がかつて生者だったときの過去を探すべく再び川を一人下って戻っていくことにするのであった。
一方、セヴェリアンはアブディーススの訪問を受け、一人の人間を殺して欲しいと頼まれる。アブディーススの仮面舞踏会に行って、その妻である妖艶なサイアリカを殺して欲しいと言うのだ。しかし、彼女はセヴェリアンが探していたペリーヌ尼僧団へと繋がる手掛かりでもあり、その手掛かりを聞くことでセヴェリアンは彼女を生かしたまま急流を伝って逃げるよう手配してしまう。執政官の依頼を反故にしたセヴェリアンは、人を生きたまま焼き尽くすサラマンダーに襲われ九死に一生を得たりするが、自らは逆方向の上流に脱出、急峻な山を登る旅路へと就く。
山を越えた先でセヴェリアンは一軒の農家へと立ち寄る。そこでは過剰な警戒に出会うが、実は先にアギアが辿り着いて屋根裏に隠れていたのだ。その日、農家の主人は帰って来ず夕暮れに怪異が訪れてきた。この怪異アルザボは、行方不明になった娘の声で話しかけ扉を開けさせようとする。妻はこれには騙されなかったが、次に主人の声で話しかけられて開けてしまう。赤い目の肉食獣アルザボは、食ってしまった獲物の人格と記憶を内部にしばらくの間は宿して共生する生き物らしく、娘と主人はアルザボの肉体の中で残る妻と息子も食ってアルザボの中で再び逢おうと考えていた。セヴェリアンの活躍でその日は難を逃れ、次の日、家族は住処を捨てて山を下ることにする。しかし、その途上で家族は獣化人たちに襲われてしまう。セヴェリアンが助けるべきか逡巡した時、アルザボが獣化人たちを襲って介入、結局、セヴェリアンも助けに入ってアルザボと獣化人は倒されてしまうが、妻もまた死んでしまった。残された息子を連れ、セヴェリアンの旅は二人旅となった。
途中、息子が連れ去られ、これを助けるためにセヴェリアンは魔法使いの見習いとの対決をすることとなる。紛い物かと思っていた魔法は、意外にも真実の部分を含んでおり危地に陥るが這う暗闇のごとき怪物の登場でドサクサに紛れて脱出することに成功する。
さらに進んでいくと打ち捨てられた村のような場所に辿り着く。そこにはミイラのような死体があるばかりで、生きているものの姿はなかったが、科学の道具と思しきものがたくさん存在していた。先に進むとそこには独裁者の姿をした巨像が立ち、その腕の指輪は金色に輝いていた。その周囲には衛兵と思しき像が立ち並び気がつくと姿勢を変えていたりするのだ。金色の指輪の一部なりと本物の金ならと確かめに向ったが、これに触れた途端に連れて来た息子は激しい電撃に打たれて呆気なく命を落としてしまう。そこにテュポーンとピアトンと言う双頭の男が現れる。彼は先に見たミイラが蘇生したもので、かつていくつもの星を支配していたと自称する。セヴェリアンの調停者の鉤爪を奪いセヴェリアンの服従を勝ち取ろうとするが失敗し、拷問者の極意により討ち果たされてしまう。
山を下ってディウトリナ湖のほとりの村までついたセヴェリアンは、そこで独裁者の権威を借りて歓待を受けようとする。しかし、岸のものたちは独裁者より近くにある城の主を恐れており、その指示に従ってセヴェリアンを捕縛し、調停者の鉤爪を城の主に送り届けてしまう。セヴェリアンも城へ送るべく湖を船で運ばれそうになったが、湖上で葦の島に住む湖のものたちが船を襲い、結果としてセヴェリアンは助けられる。湖のものたちと岸のものたちの争いに巻き込まれたセヴェリアンは湖のものを指揮して城に最近になってやってきた新参の科学の道具を岸のものに与えて支配している主を急襲することとなる。彼としては調停者の鉤爪を取り戻したいのだ。しかし、城へと自分が先人を切って侵入してみると、そこにいたのはタロス博士と、バルダンダーズだった。そしてそこには客人として宇宙からやってきた退化人の三人組もいた。しかし、三人は早々に宇宙へと帰ってしまう。
バルダンダーズは捕らえた湖のものたちを使って人体実験をして自分が知識と共に生きながらえるための術を研究していた。実はタロス博士も彼が自分の体を手術させるために作った彼の作品だったのだ。彼はますます巨大化し手が付けられなくなっていた。セヴェリアンはバルダンダーズと対決することとなり、城外から急襲してきた湖のものたちの手助けもあって愛剣テルミヌスエストと、調停者の鉤爪を壊されてしまうが、辛うじて彼を倒して生き残ることができた。