○ゴルの巨鳥戦士を読む

bqsfgame2008-02-03

原作は1966年。バローズの最高傑作火星シリーズを意識した反地球ゴルを舞台としたヒロイックファンタジー
日本では創元文庫から1975年に登場、武部画伯のイラストになる表紙でこれまた火星シリーズを意識した出版だった。
火星シリーズと比較するとわかりやすいのでまとめると
火星シリーズ
・低重力の火星では軍神と呼ばれるほど強いヒーロー
・強いだけでなく精錬潔癖な人格者
・妖艶な武部画伯のイラストとは裏腹に怪しいシーンは出てこない
反地球シリーズ
・それほど図抜けて強いというわけでもないヒーロー
・地球での生活ぶりからするとかなりのちゃらんぽらん
・妙に隷属的な男女関係に関する描写が多めでちょっと怪しい雰囲気
と言ったところだろうか。
ストーリーの構図は「火星の大元帥カーター」に非常に良く似ている。地球からゴルへと連れて行かれ、そこで英雄としての使命を与えられ、そこから大冒険が広がっていく。個人の冒険が最後は国家間の危機へと繋がり、決定的な場面で本国の支援がやってきて大団円。そして主人公は地球へと帰る。
ちょっと気になる点が二つある。
先ずストーリーが軌道に乗るまでがギクシャクする。
次にヒーローが登場時点ではちゃらんぽらんで決定的に強くないと紹介されたと思うのだが、結果的にはジョン・カーターばりの働きをしてしまうところに無理が感じられる。
ギクシャクという意味では最初に出てくる奴隷女性がヒロインかと思いきやあっさり消えてしまうし、次に大任務かと思う敵対都市への潜入任務があっさり終わってしまう。そして、その結果として同道することになった敵対都市の司令官の娘がヒロインで、敵対都市が必ずしも単純に悪ではないというところからストーリーが面白くなっていく。
そして、敵対司令官の娘がプライドが高く敵意を持っているが、彼女を捕虜として扱いつつも愛し始めていくという当たりが本作の怪しい部分ということになる。と言っても露骨な性描写や暴力描写がある訳ではなく、いまの基準としては上品なものだと思う。逆にそこが返って独特の怪しい雰囲気をもたらしているのかも知れないが。
少々、アクの強い作品だと思うが、個人的には先日読んだ「黄金の羅針盤」よりずっと面白く読めた。やっぱり自分的なSFの黄金時代に読んだ火星シリーズへのノスタルジアみたいなものがあって、こういうストーリーガ自分は好きなのかも知れない。最後の攻城戦の場面はかなり盛り上がった。