☆前哨を読む

bqsfgame2018-04-17

クラークの第1短編集の邦訳です。
今では、ベストオブクラーク3分冊があるのですが、筆者の世代はオリジナル編成の和訳一式を持っているので。
実は初読。
非常に面白く読めました。奇数作品が良いです。
中でも方程式テーマの「破断の限界」は、非常にサスペンスフルに書けていて、意外な展開と相まって傑作と思います。
「優越性」は、宇宙戦争に負けた総司令官が、負けた理由は技術的な優位にあったと弁明する弁明書です。どうしてそんなことが起こるのかは読んでのお楽しみ。SFゲームになっても良いのに。
「かくれんぼ」は、一人のスパイが巨大巡洋艦の追跡から逃げ切って見せる話し。航空宇宙軍史もかくやという感じです。
「第2の夜明け」は、手が未発達で精神文明を築いた種族が凶悪な精神兵器で他種族を殲滅したことを悔い、物質文明を改めて起こし始めるお話しです。もちろん核兵器を使った物質文明に対する批判の書です。全体的に、初期のクラークはシニカルな作品が多いですね。
「前哨」は、「2001年」の映画の着想になったと言われる小品。英語版では、「地球への遠征」が表題作なのですが、日本ではタイトルストーリーに抜擢されました。
「抜け穴」は、人類が暴力的なので宇宙に出る資格がないと火星人に封鎖されてしまったお話し。それに対して人類が抜け穴を見つけるのですが‥。クラークは戦争経験者なので、戦争に対する冷静な批判には説得力があります。