☆時の子供たちを読む

またしても竹書房文庫です。

星雲賞の候補に挙がっていますが、特に海外の主要賞は取っていません。唯一、イギリスのアーサー・C・クラーク賞を受賞しています。
これまたすごい構造物です。
地球を自滅させた人類が、移民先を求めて恒星間旅行に出て、そこへ知的進化加速ナノウィルスを巻いたという設定です。
しかし、その結果進化したのは用意して降下させた猿ではなく、土着の蜘蛛たちだったというお話しです。
で、テラフォーミングを続けてから当該星系に戻ってきた人類と、進化して待ち受けている蜘蛛たちとが一つしかない惑星を争って激突するというクライマックスです。
人類の生き残りを賭けて航海する宇宙船内の争いと、進化を続けて惑星を支配していく蜘蛛たちの物語が交互に並行して語られますが、特に魅力的なのは蜘蛛パートです。
読んでいると、蜘蛛型宇宙人という点で、「愛は定め、定めは死」を連想させます。また、究極の選択を強いられるという点で「たったひとつの冴えたやり方」を思い出したり。そういう意味では、どことなくティプトリー感満載でした。
しかし、途中までの苛烈な視点に対して、意外なほどのハッピーエンドに辿り着きます。甘々という感じではなく、それなりに人類に対する厳しい視点は持ち続けているので、重厚な作品になっています。
作品としては完全に完結していますが、意外なことに続編が出たのだそうです。どんなことになっているのか非常に興味深いです。
星雲賞候補作品としては、これで3つ(三体Ⅲ、こうしてあなたたちは時間戦争に敗ける、本作)読みましたが、個人的にはコレが一番面白いかと思いました。