ついに最終巻に辿り着きました。図書館。
この巻の巻頭にスタージョンが来るように切り分けたのが日本側なのかエリスンの助言なのか判りませんが、センス良いです。
●代用品
ヘンリイ・スレッサー。聞いたことのない作家です。
どこかの雑誌で没にされたものをエリスンに渡したのだそうです。
未来戦争ものですが、ホローコースト後のピースステーションが散在するアメリカを切り取ったショートショート。洒落ています。
●行け行け行けと鳥は言った
ソーニャ・ドーマン。これも聞いたことのない作家です。
二人の子供を持つ母親が、最後は子供に食料として殴り殺されるショートショートです。かなり怖いです。
●幸福な種族
ジョン・スラデック。
映画「マトリクス」を思わせる未来ディストピア。非常に上手く仕上がっています。
●巨馬の国
RAラファティ。
「900人のお祖母さん」にも入っているので読んだことがあるはずですが覚えていません。エイリアンが、一掬いの土地を持って行った時に、その土地から逃げた人々がジプシー民族になったというお話し。
●破壊試験
キース・ローマー
暴君に拉致された主人公が、たまたまエイリアンの被検体にも選ばれて、主人公の脳を舞台に両者の拷問エネルギーと探査エネルギーが衝突するという話しです。試験片を両側に引っ張る引張破壊試験のイメージです。ローマーの描くサスペンスって、カッコイイです。
●カーシノーマ・エンジェルス
ノーマン・スピンラッド。
SF版藁しべ長者です。スポーツカードコレクションから始まって立身出世を遂げるのですが癌になってしまって、今度は癌の治療方法を見出すために全力を尽くす話しです。
非常に軽快にテンポ良く読ませる佳作です。
エリスンによると、主人公はスピンラッド本人がモデルではとのこと。
●異端車
ロジャー・ゼラズニイ。
牛の代わりに車と闘う闘牛士こと、闘械士をスタイリッシュに描いた掌編。
こういうのを書かせるとゼラズニイは超一流です。
●然り、そしてゴモラ
サミュエル・ディレーニイ。
「時は準宝石の螺旋のように」で読んだはず。
宇宙に出るスペースマンは宇宙線を浴びるので無性者に改造されるという未来設定。しかし、その無性者が特殊性ゆえに非常にモテるという歪んだ世界の話しです。
以前にも指摘しましたが、ディレーニイ特有のアウトサイダー文学の結晶です。
これを巻末に持ってきたエリスンのアンソロジストとしての見る目はさすがと思います。
スタージョンで始まって、期せずしてスタージョンの後継者とも言われるディレーニイで終わるという非常に良いアンソロジーでした。