☆ふたりジャネットを読む

bqsfgame2007-02-23

「最後のウィネベーゴ」が良かったので奇想コレクション繋がり。
テリー・ビッスンを読むのは実は初めて。本書は日本オリジナル短編集で2004年2月の発行。もう3年前になる。
なんと言っても気に入ったのは「穴の中の穴」。オールタイムの短編ベストを問われても、たぶんどこかに入れることになるだろう。傑作かと言われると疑問もあるのだが、とにかく好み。ビッスンは結構、多様な作品を書くのだが、メインのテイストは「もっと上品で、もっと整理されたラファティ」と言ったところだろうか。ラファティは昔から好きだったのだが、多少、未整理な部分があり、特に長さが長くなるとその傾向が顕著なところに難点がある。あと作風の幅がないので雑誌で一篇読むと嬉しいのだが短編集で大量に読むと胸焼けする‥(^_^;
その点でビッスンの方が整理されていて作風の幅もあり、読後感さっぱり、短編集でまとめて読んでも嬉しい。素晴らしい作家がいたものだ。
日常生活の断層にある不思議な空間というモチーフ、そこにエセ科学と、マニアックなこだわりが混ざって素晴らしい一篇に仕上がっていると思う。知っている街の未探検の一画を歩いてみたら思わぬ風景が広がり不思議な施設が見つかった‥というような経験は誰しもあると思うが、それのSF的トールテールバージョン。
「未来からきたふたり組」は、小松左京の「やせがまんの系譜」や「時間エージェント」を思わせるタイムパラドックスとラブストーリーのミクスチャー。
「アンを押してください」は、会話だけで進行する洒落たショートショート
世評の高い「熊が火を発見する」は集中では実はそれほど感心しなかった。タイトル通りの話しで、最近、熊が火を発見したらしいという話しをまことしやかに進めていく奇妙なテイストの短編。一番ラファティに近いかも知れない。
「英国航行中」は、英国そのものが大西洋を航行しだすという話しを淡々と進めていってしまう作品。
「冥界飛行士」は、この中では異色の臨死体験もののダークテイストの中篇。読後感が悪いが完成度は高いと思う。こういうものも書けるのかという意外さ。
「宇宙のはずれ」と「時間通りに教会に」は、「穴の中の穴」のシリーズ続編。これも面白いが、好みにピッタリと嵌まったという点で「穴の中の穴」ほどには感激しなかった。
全体として非常に面白く、傑作かどうかは別としてここ数年で読んだ短編集の中ではダントツ1位の好みだと思った。もっと早く読んでおくのだった。ビッスンのほかの作品をサルベージしなくては‥(^_^;