ゲーム題材の体感性

此処が本作が一番優れている部分だと思う。
本作の大きな特徴に、マルチでありながら自由に交渉ができないという点がある。プレイヤーが緻密な作戦が立てられるほど状況を的確に掌握できないという点がある。これらは古代戦のシミュレーションとしては、実は非常に的確なのではないかという印象を受けた。
つまり、古代においてタイムリーに他の複数の勢力と緻密な外交を繰り広げることは無理だし、本国と遠く離れた戦場に対して的確な指示を送ったりすることも無理だし、そもそも指示以前に状況把握すらタイムラグをもって精度の悪い形でしかできないというのが真実の姿だったのではないか。
その意味では、かつてS&Tでミランダが始めて「Trajan」を発表した時に感じたインパクトに近いものを本作は感じさせてくれると思う。つまり、「今までのシミュレーションゲームは、なにか根本的に大きな見落としをしていたのではないか?」、「指揮官の視点で見たとき、神様のように細部まで的確な情報を獲得し、自分の分身であるかのように全ての部隊に自分の意思を反映して行動させることができるなど、事実と懸け離れたとんでもない勘違いをしてきたのではないか?」という衝撃的な認識である。
その意味で本作は是非とも多くの古代戦シミュレーションゲーマーにプレイして欲しいと思う。
そのためには、ルールはもっと刈り込んで半分くらいの分量にして欲しい物だという気がする。
実際、本日のプレイでも、全然運用されないルールもいくつかあった気がする。
デザインの切口は抜群、デベロップメントはさっぱりという評価だろうか‥(^_^;