「エンディミオン二部作」として

二部作としては、前回が準備と前哨戦だったとすれば、今回が本番。700ページもあるのに、下巻に入ってからは結構ハイペースで物事が進んでしまい短く感じさえする。逆に言えば準備段階での諸世界の探訪、魅惑的な異文化の地である天山の描写などの厚みが圧倒的だとも言える。この異世界描写の厚みは、なるほどヴァンスにオマージュを捧げるだけあって「さすが!」の出来栄えだと思うし、本二部作で一番楽しめた部分だと思う。
二部作全体の謎解きとしてはストレートなキリストの物語の延長線にあり、実はキリスト教に関する知識がまったくない当方にとってはなかなか評価しがたい。むしろ「ターミネーター」の延長線上で読んでしまった。読みやすいし異世界描写の厚みもあるので、ストーリー自体が単純なチェイサーであることはマイナスではなく、この二部作全体として評価できると思う。