○バビロニアウェーブを読む

bqsfgame2008-01-29

堀晃さんの1988年の作品。堀さんの唯一の長編にして星雲賞受賞作。
発売当時に単行本ではなかなか学生には買えず文庫化を待っていたのだが、20年待つことになってしまった。
率直に言って「マッカンドルー航宙記」を読んだ時に感じたのと同じことを感じた。科学的なアイデアは面白い。ストーリー展開も悪くはない。けれども、それをホワイトボードに書いて説明してもらってディスカションしたら凄く面白いだろうなと思うのだが、出来上がった小説を読むと冗長な印象を受けてしまう。
スケールの壮大な構築物という意味で、バビロニアウェーブはSF界でも屈指の部類に入ると思う。それを巡る人々の様々な思惑、人類文明に与えた影響という考察も面白い。そして、その背後にある新たな宇宙観も凄い。
どこを取っても悪くなさそうに見えるが、実際に読み進んでいくと、孤立した最前線で少人数の人々だけしか出てこないため、意外なほど物語としては殺風景に見えてしまう。20年も待って勝手に期待が膨らんでいたのかも知れないが、いささか失望してしまったのは事実。しばらく前に読んだ短編集「太陽風交点」と比較すると、アイデアがストレートに出せて、小説としての読み応えが表立って問題にならない分、短編集の方が良いのかなと思った。「遺跡の声」も創元文庫で出たので読んでみようかと思っている。