○アリアドニの遁走曲を読む

bqsfgame2008-02-19

コニー・ウィリスが別作家と共作した長編小説。
近未来、西部合衆国とケベックが戦争をしている時代を舞台に、両国の間を巡る陰謀に少女が巻き込まれていく。疎開先から始まり、自分の家庭に戻ると母は反逆罪で逮捕されていて‥というオープニング。そこから次々に舞台は早回しで展開していく。
ウィリスの小説では主人公とともに焦燥感を持ってストーリーの中を駆け抜けさせられるのが凄いと思うのだが、その持ち味は本作でも出ている。ただし、タイムトラベルを絡ませて現代と中世で破局が進んでいく「ドゥームズデイブック」や、臨死体験に踏み込んで現実と内世界で焦燥感が募る「航路」と比べると、迫力と言う点ではずっと軽い。もっとエンターテイメントよりで、少女ヒロインが軽快に活躍して見せるのが本書の魅力だろう。
とは言え、結局のところ結末では母親は死んでしまうし、ご都合主義的にすべて万々歳とは行かない結末になっている。重さと言う点では迫力に欠け、エンターテイメントにしてはいささか重苦しい部分も併せ持っており、個人的な好みからするとどっちに徹して欲しかった感じがする。
惜しい。