×不在の惑星を読む

bqsfgame2007-12-26

1985年に新潮文庫に書き下ろされた水見稜の長編SF。
惑星トアコルの調査に来た調査隊は、人間とほとんど同じトアコル人と接触し、その起源が人間と同じものかどうか調査を開始する。調査が進むに連れ、まるでTVの書割セットのように実在感の薄いトアコル人の実状が理解されていく。その一方で、調査隊員たちも変容し始める‥。
最後は惑星トアコル自体が巨大な脳のような存在であり、トアコルの地上生命は惑星に見られている夢か妄想のような存在であると言う謎解きがされる。そして、この惑星は周期的に発作のようなものを起こし、その前の文明を埋殺して新しい文明の夢を紡ぎ始めるのだという。それが文明が書割のように歴史的な厚みがなく、また地下を掘っていくと次々に別の文明の遺跡が出てくる理由だと言うのだ。
と要約して見ると初めて頭の中が整理された。整理されると、そんなに悪い作品ではないような気もしてきた。しかし、読書中は読みやすいのだが、一向にセンスオブワンダーを感じられず印象が良くなかった。謎の提起の仕方の魅力が薄く、また謎のスケール感が感じられなかった。意識的に文明の存在感を薄く書いているのかと思うのだが、結果として謎としての提起の存在感も薄く、迫力もなくなってしまっているような気がする。結末も凄いことが起こっているのだが切迫感が薄い気がする。