ダグラス・ナイルズ

上記リストを見ると、多くのゲームをデザインし他のメーカーでも並行して活動していたバーグ大先生とプラドス先生を別にすれば、3人のデザイナーが3作ずつを提供してTSR−SPIを支えていたことが分かる。
一人目は「オンスロート」のダグラス・ナイルズである。
個人的にはナイルズは、拡張キットや企画物のデザインをこなす二流デザイナーというイメージが強かったのだが、そんな仕事をする中で、彼はTSR−SPI時代にいくつか自身の代表作を発表している。その一つが「オンスロート」であり、さらに企画物ではあるがトム・クランシーの小説に材を取った「レッドオクトーバーを追え!」と「レッドストーム作戦発動!」である。
オンスロート」は発売当時のウォーゲーム衰退期の状況下では非常に評判が悪かった。当時はブームが去った後であり、残存ウォーゲーマーは去って行った「軟弱?」ゲーマーたちに対する非難の意味も含めてゲーム性を重視する傾向やプレイアビリティを重視する傾向に対して厳しかった。結果として「オンスロート」は、ゲーム的に過ぎるとか、自由度が高すぎるとか、師団番号が入っていない、OOB軽視であるというような批判を浴び、プレイ以前の段階でダメダシされたと記憶している。
彼の本当の意味での代表作と言える「WW2太平洋シアター」というビッグゲームがこの後に発表される。BGGのコメントを見る限り、過度に難しくない太平洋全体をビッグマップでプレイできるゲームとして発売時点では良作だったらしい。しかし、「ワールドインフレームス」にすぐに追い越されてしまったため、アメリカでは今でも新品が売れ残っており、日本ではほとんど話題にならなかった。
その後、シミュレーションゲーム界では新規ゲーマー獲得のためにはゲーム性の高いプレイアビリティの高い作品が必要だと言う潮流が再び沸き起こり、日本では翔企画のSSシリーズに代表されるような、アメリカではXTRのCOMMAND誌に代表されるような作品群が登場するのだが‥。返す返すもナイルズという人は最悪の時期に自身の代表作を出して評価されることのなかった不遇の人である。