ハイドゥナン1−2を読む

bqsfgame2008-07-29

待望の文庫化。
それにしても単行本の時に大作だと思ってはいたが、文庫化されてみたらなんと4分冊とはビックリ。つまり、1−2だけではまだ前半しか終わっていない。しかしながら、割り込みで読みたいものが入ってきてしまったので、前半で一区切りにしておくことにした。
前半だけで云々するのは適切でない可能性もあるので深入りはしないが、此処までは凄い迫力だと思う。
まず、なんと言っても非常に欲張りで盛り沢山な内容だ。
軸になっているのは琉球を襲う地球科学的な異変である。ただし、それを巡るストーリーラインは複数が並走している。一つには沖縄のハイドゥナン伝承とムヌチを継ぐことを要求されるヒロイン後間柚という伝奇SF的なラインがある。これと密接に関係しているのが超能力的な力でヒロインと結ばれている伊波岳志で、彼は共感覚を持っており、海洋学を学ぶ学生である。この伊波を介してサイエンティフィックなラインが連結され、共感覚や超常能力と量子コンピューターや石の記憶の研究が連結されていく。そして、もちろん海洋学のラインからは沖縄付近の異常を研究する海底探索の話しが連結される。沖縄付近の海底資源探索問題ということになり、これに政治が連結し外交問題という厄介な話しもちらほらしてくる。それとは別にオイロパダイバーとオイロパに住む可能性のある生命体の話しが今のところは連結されない形で輻輳されている。そして、海底探索には生物学者も参加しており高温高圧下で生存する地球の生命体というのが顔を出してくる。
これらの全てが連結して最後には一体どういう結末を迎えていくのか前半終了段階では予想だにし得ない。後半への興味は尽きないので早く再開して読み終えてしまいたいとは思っているのだが、こういう時に限って読みたい本が山なりになって収拾が付かなくなってしまった。
前半戦のクライマックスは、海底の決定的な情報を得るための深海下をさらにマントルまで掘り進んでサンプリングすると言う海底掘削の場面。その決定的な瞬間に、キンバーライト噴火が起こると言うところで前半は幕を閉じる。
「クリスタルサイレンス」も盛り沢山な内容の力作だったが、本作はそれ以上に盛り沢山で豪腕無双の作品と感じさせる。盛り込まれている内容のスパンもさらに広くなっており、端的に言えば「ワイドレンジ・パワーSF」と言ったところだろうか。