SGC例会:ウェルス・オブ・ネイションズを対戦プレイ

bqsfgame2008-09-29

最近あちらこちらのゲームサークルに登場したゲーマーズゲームのニューフェイス
ゲーム紹介記事としては既にmoon gamerさんに詳細なものが挙がっているので要点だけ。
1:工業を設立し、そこに必要な資源(多くはエネルギーと食料)を投入して生産物を獲得する。そして、生産物を交易、売買して、また次の設立、生産を実施していく。
2:市場メカニクスがしっかりしていて、需給がタイトなものの市場価格は上昇、ルースなものは下降するようになっている。
3:工業を設立する部分はヘクスマップにタイルを配置するようになっており、このため土地占有やタイル配置設計の要素も重要になっている。
4:運の要素がなく、ダイスもカードも使用しない。設立も生産もチャート通りに自動的に発生するので、他プレイヤーとのインタラクション以外は、かなり先まで見通すことが可能である。
5:借金が無制限にでき、プレイ途中に金利負担を強いられない。このため、プレイの見通しに失敗した場合は借金をして不足資源を購入することができる。
率直な印象としては、典型的な拡大再生産型のメカニクスに、全員共通のヘクスマップへの産業タイル配置の綾を組み合わせたストレートな発想の佳作。こういう作品が既にあっても不思議ではないのだが思い付かないので、その意味では新機軸のコンビネーションと言って良いかと思う。
いくつか大きな特徴があって、
a:作業の時間負荷が大きい。交易フェイズでは、1プレイヤーが1取引する度に手番が移って行き、全員が連続してパスするまで続く。つまり、一度パスしても、後から再参加できる。また、プレイヤー間交易ができるので、他人の手番でも席を外してしまうということはできない。
b:計画負荷が大きい。このターンに、産業●●と産業■■を稼動させるために資源●●と資源■■がいくつ必要で、それ以外に産業▲▲を新設するための資源を調達したい。さて、産業▲▲を新設するための建設予定地はどこにしたいが、そうすると▲▲さんと地権の取り合いになるので‥。と言ったように、いろいろなことを加味して先まで考えてプレイする必要がある。
c:作業負荷も計画負荷も大きいので、どうしてもミスが起こりやすい。起きた時に、シビアなシステムの拡大再生産型ゲームなので、挽回することが難しい。拡大再生産型のゲームは、どうしても一手遅れると、その一手のもたらす生産が次のターンには雪達磨式におおきくなっていくので非常に痛い。本作はその典型の一つであり、そこを緩和するルールとしては、無制限に借金できるということが設定されている。しかし、借金はそのままマイナス点であり、結果としてプレイを続けても先行するプレイヤーを挽回する方法としては、
ア)相手が同じようにミスしてくれるのを待つ。
イ)相手と交易しないことで相手の進行を多少なりとも阻害する。
ウ)相手の必要な土地を先んじて占拠して進行を阻害する。
という3つくらいではないかと思う。
ただし、アに関しては完全に他力本願。イについては、交易しないことには自分にもバックファイアがある。また、常に市場から調達可能なので完全にトップへの特定資源の供給を停止するようなことは他の全員が強調しても実施できない。ウを実行するには、これまた資源が必要で、その資源のパワーでリードを許してしまっているのだから思うようにならない気がする。というところだろうか。
本作に限らず拡大生産型ゲームでは、どうしても序盤で早く効率の良い成長パターンを築いたプレイヤーのリードの拡大を止めがたいという難点が共通にあるので本作だけを非難するのは当らないかも知れない。しかし、上述した通り、作業負荷が重くプレイ時間が長いため、その長く重いゲームを勝機を失って延々とプレイさせられるのは、非常に辛い気がする。
実際、この日のプレイではインスト開始から4時間ほどのところで協議終了となった。最後までプレイしなかったので分からないが、盤面の印象としてはまだ中盤戦で、ルール的な終了条件が達成される見通しはまだ立っていなかったかと思う。この日は4人でのプレイで、初見者が多数派という状況だったが、最後までプレイするのであれば6時間くらいではないかという漠然とした印象を受けた。その中で、わたしの場合は中断した4時間の時点で勝算なしと思ったが、人によってはもっと早く勝算が薄いと感じたのではないか。そうすると、悪い場合には4時間も5時間も勝算のない負荷の重いゲームに付き合うようになってしまうので、結構、厳しいかも知れない。
自分が間違えたのだから自業自得だと言えば一理あるが、それにしても他のゲームに比べて悪手やお手付きが非常に厳しく罰せられるゲームであることは間違いない。そういう覚悟のない人にはプレイしがたいという印象を受けた。プレイ感として18xxシリーズの中でも重量級クラスのものや、ローズ&ボーツの大き目のマップでの大人数でのプレイと近いのではないかという気がする。
念のために書いておくが、本作がつまらないということではまったくない。むしろ内容的には魅力的で、順調にプレイしている限りにおいては楽しい作品だという気がする。しかし、面子と場の双方を非常に厳しく選ぶゲームだと言う気がした。同じことは重量級の18xxにも、大き目のR&Bにも言えるかと思う。