2000年に発行された尾越八段のヨセに関する棋書。
ヨセに関する棋書はそもそも数が多くないが、その中でも本書は数少ない傑作という世評を複数の箇所(たとえば、http://pocketgoban.com/mt/archives/000296.html)で見て、古書で発掘した。
なるほど、これは面白い。
タイトルにある通り、大ヨセに的を絞って、一冊丸ごと大ヨセの話だけである。
小ヨセは計算の世界だが、大ヨセはまったく異質の世界であると看破している。
そして、戦意、反発心、形勢判断と相場観が大事だと連呼しながら、まず理念。続いて重要なパターン。そして、最後に棋譜実例を見ていく。
特に面白いのは棋譜実例で、プロ対プロの碁で勝勢の側が大ヨセをきちんと制して勝利した棋譜を、アマ有段者同士で大ヨセから打ち継がせるとどうなるかという試みが続く。
その結果からすると、有段者同士でも大ヨセで悪手、緩手が続出して、往々にして逆転、また逆転という棋譜が連発である。
そうか、有段者でもこんな程度のものかと安心するような、プロとの差異に嘆息するような、なかなか表現しがたい感想を持った。
アマにとって特に難しいのは、形勢判断を踏まえた上での反発という部分だろう。そこが適切にできるかどうかというと、ほとんど出来ていないというのが本書の結論かも知れない。