○ヨセの強化書:基礎編を読む

寺山玲五段(発行時は四段)の初めての本です。

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棋書は数あれど、ヨセの本は多くありません。しかし、ヨセで学ぶべきことは意外と範囲が広いのが難しいところです。

1-1:部分的な最善の手段

1-2:上記手段の定量的評価

2:形勢判断(正確な目算)

3:1、2を踏まえた上で全局としてどういう手順でヨセるか

という3段階にざっくり分けられると思います。

1は、部分的な議論です。ドリルにしやすい部分と言えます。「イチャンホのヨセ」などは良書と思います。

2は、1の基礎知識を踏まえた上で算定する必要があるので、一つ上のステップになります。

3が難しい。形勢判断を踏まえた上で、安全にヨセていても良いのか、ギリギリまで踏み込むのか問われます。

それとは別に、他のヨセとの関係で、必ずしも部分的な最善の手段が正解ではなく、少し損でも先手を取って寄せて他に回る方が全体としては正解と言うこともあります。本書の終盤の問題は、こうした事例が並んでいて、なかなか難しい。

先手を取れるかどうかという話しの裏側には、相手が手を抜いた場合の大きさの評価が必要な場合もあります。普通なら先手であるはずの所を手抜いても別の場所を打った方が最終的には良いということもあり得るからです。

ここらへんがヨセの奥深さなのですが、本書はその奥深さの入り口を越えて最初の曲がり角を曲がって外の光が入らなくなるくらいまで進んでいます。これで基礎編ですか?

多くの級位者には、ここまででも十分に難しいように思います。

類書がなかなか見つからないタイプのドリル本なので、広く勧めますが、上述の通り難しいことは承知して読んで欲しい所です。けれども、有段者として強くなりたいなら避けて通れないスキルでもあります。