○人生ゲームを読む

bqsfgame2011-06-25

懐かしいサンリオSF文庫。
発売当時に読んだが印象が悪く、今回オークションで処分することに。
ついては最後のご奉公で、もう一度、読んでみた。
「眩暈」以上に地味な小説。設定だけしっかりとSFしている。
近未来のイギリス。そこでは月塵と呼ばれる有益な塵がどこからともなく降ってきて世界の貧困は消え去っていた。それと同時に謎の音楽がどこからともなく聞こえてきて、ランダムに人が消滅してしまう。
主人公は保険会社の死亡確認の仕事をしている。消滅は失踪と同じ扱いなので、消滅しても数年後まで保険金の支払いの対象にならない。ところが、偽の死体を確保してきて保険会社を欺いて保険金を取るケースが多発、それを避けるための死亡確認と言う仕事があるのだ。
主人公は多額の保険金を賭けた夫が消滅した未亡人のところへ死体確認に。案の定、死体は偽者。しかし、彼はそれを見逃して未亡人が多額の保険金を取るのに加担する。その代わりに彼は彼女をゆすって保険金の4割を得ようとする。
保険金詐欺とゆすりの二人。この二人の一週間ほどの様々な葛藤を描く普通小説のように地味な展開の作品。
そして、結末らしい結末はなく、ふっつりと物語は終ってしまう。
筆力は確かなので、読ませない訳でもない。しかし、それにしても結末の釈然としなさは覆うべくもない。
コンプトンの翻訳は本書の後もまったく進まなかったが、無理はないのではないかと思う。
サンリオの翻訳予定には、彼の傑作と言われる「電気クロコダイル」や「クロノキュルス」が挙がっていたが、実現しなかった。