○ジェイクをさがしてを読む

bqsfgame2012-03-13

ミエヴィルの主張するニューウィアードらしさが溢れる短編集。
様々な彷徨える街路が交錯する「ロンドンにおけるある出来事の報告」は、なかなかに味のある一編だと思った。
「使い魔」は、魔法から派生した一種の怪物ホラー。ただ、所謂、使い魔のイメージとは懸け離れた独創的な異形のものが登場する。
「ある医学百科事典の一項目」も、奇病の説明の体裁を取った一種の怪物ホラー。
「細部に宿るもの」も、独創的な怪物ホラー。
ここらへんの諸作品は、いずれも怪物ホラーだが、既成のファンタジーやホラーの造形を使うのではなく、ミエヴィルならではの新しいアイデアの異形が跋扈するところが、なかなかに魅力的だ。
「もうひとつの空」は、ボブ・ショウのスローガラスを思わせるようなガジェットだが、これも一種の独特のホラーになっている。
「あの季節がやってきた」は、集中でもトップクラス。クリスマスに纏わる資本主義の尖鋭的なディストピア小説
「鏡」は、巻末に置かれたノヴェラ。残念ながら、この作品は非常に読み辛く、折角、順調に来ていた本作品集の読後感を非常に悪くしている。一種のヴァンパイアものなのだが、そこはミエヴィルらしく、ヴァンパイアが何者なのか、なぜ鏡に映らないか独特のアイデアを展開し、それに基づいた荒廃したロンドンを克明に描いている。