眼下の敵のルールを読む 2

眼下の敵で、もう一つ理解しにくく、プレイするとしたら大きな問題になりそうなのが索敵です。
索敵には、数種類がありますが、メインとなるのは護衛艦側が潜水艦を索敵するASDIC索敵(アクティブソナー)でしょう。
具体的な手順としては、護衛艦側がASDICを実行する海域を盤上にマーカーで指定します。この時に、索敵レベルを裏面に記載したマーカーを、索敵を実施するへクスから実施方向を向けて配置します。
重要なことですが、眼下の敵では、護衛艦側から潜水艦が見えないと同時に、潜水艦側から護衛艦も見えません。これは、潜航中の潜水艦は視界が限られ、音響情報など限定した手段でしか護衛艦の情報を得ることができず、艦種や正確な位置や進行方向などが把握できなかったと言うことでしょう。
このため、ゲームはダブルブラインド状態なのですが、本作ではそれをダブルブラインドシステムではなく、ツクダがタスクフォースシリーズで開発したコールマーカー方式で実現します。
護衛艦は上述のように索敵マーカーを置くのですが、結果として索敵マーカーが置かれた位置に索敵実施艦がいると言う情報を露呈してしまいます。そこで、コールマーカー方式同様にダミーの索敵マーカーを混ぜて置くことができます。ただ、置き方によって本物とダミーが露見しやすいので、この作業中は潜水艦プレイヤーは背を向けていた方が良いでしょう。これにより、索敵マーカーがあるからと言って必ず護衛艦があるかどうかは分からなくなります。
潜水艦側は自軍潜水艦が索敵マーカーの範囲にいたら、実際に発見されたかどうかを判定するために索敵マーカーのレベルを確認し、潜水艦の騒音状態などと比較してダイス判定を実施します。この方式だと実際に潜水艦がいない限りは、護衛艦のダミーを検出することはできません。
ところが、この判定のために特定の索敵マーカーを開けると、その範囲に潜水艦がいることがわかってしまうので、この作業の時には護衛艦プレイヤーは背を向けていなければなりません。
と、此処まで両者が互いの作業時には背を向けるようなことまでして、互いの隠匿性を確保する手間を掛けるのですが‥。
それでも実際に、索敵が成功すると、護衛艦が潜水艦の情報を得るだけでなく、潜水艦プレイヤーは実態のある索敵マーカーを見たことで護衛艦の位置を把握できてしまいます。つまり、索敵には相互性があり、一方が発見すれば見返りに相手にも情報が渡るようになっています。このため、他方を先に発見して、相手の知らない間に接近すると言う潜水艦映画のようなシチュエーションは、ゲームシステム的に成立しないようになっています。これは、ボードゲームで審判なしに索敵判定をする上で止むを得ないことですが、プレイヤーが潜水艦ゲームに期待するサスペンスを殺いでいることは事実でしょう。
また、タスクフォースシリーズを実際にプレイした人ならわかるように(http://www.asahi-net.or.jp/~rf6y-kbr/YSGA/Picaro/99001.html)、このシステムは意外に作業負荷が大きいのが弱点です。敵の逆探知を防ぐためにダミーマーカーをたくさん置きたくなるのが人情ですが、そうするとダミーの置き方を考えるのに労力を使い、それに対する判定に労力を使います。しかも、この労力は、実は潜水艦側が一回でもダミーを検出すると、後は只の骨折り損にしかなりません。
前のターンにダミーを置いた海域に次のターンは置かないとバレてしまうので、置き続け、このダミーマーカー群がそれらしく移動するように護衛艦側は腐心します。しかし、潜水艦側が一度、このマーカー群がダミーだと知ってしまうと、労多くして何の欺瞞にもなりません。
また、こうしたシステムの難点として、リヴォーク(プレイ上のルール間違い)の発見ができないことがあります。互いに相手のプレイの手順をチェックすることはできず、また疑問点があっても質問できません。質問してしまうと、どういう状況にあるかの情報を与えてしまうので、ゲームシステムの意図する隠匿性を大幅に殺いでしまうからです。
そうすると、プレイに際しては、両者が十分にルールに精通していて、間違いなく運用できることが必要になります。
しかし、ルールは独自性が高く、また書き方が良くないので、なかなか大変です。当日、インストでプレイ中に間違えないように理解してもらうには難しすぎます。そういう意味では、なかなか対戦を設定するのが難しいゲームだなと言う気がしています。
そう考えると、U−ボートリーダーのような潜水艦側視点のソリテアと言うのは現実的な解なのかなと思います。
U−ボートリーダーでは原則として潜水艦側が先に船団を発見して接近攻撃でき、そうではないケースはイベントカードで発生して処理するようになっておりゲームには反映されています。
他にも潜水艦ゲームはいくつかありますが、対戦ゲームで、潜水艦戦の戦術的なサスペンスを上手く表現できている対戦ゲームと言うのは難しいのでしょうか?