前回のソロプレイ、その後の史実の確認を踏まえて、二度目をやってみました。
今回は第7ターン終了時の南軍の政治的勝利による完全決着までプレイしました。所要時間は、セットアップ除きの正味で3時間でした。
いろいろな感想があるのですが、全体として評価は前回より上昇しました。
1:3時間で南北戦争全体をプレイできるゲームは、ハウスディヴァイデッドくらいしかなく、非常に貴重である
2:上述のようにプレイアブルでありながら、北軍が南部を打ち破るために必要だった戦略的要素が適切に強調されている
3:南部を海上封鎖することの意義が大きく、そのための海軍による封鎖(イベントカードによるアナコンダ作戦)と陸軍による港湾の占拠(海への進撃)がゲーム戦略上重要な位置を占めている
4:北軍の指揮官人事の問題が強調されており、グラントを東部戦域司令官、シャーマンを西部戦域司令官にするまでの段取りがゲーム上重要なテクニックになっている
プレイアビリティではハウスディヴァイデッドとそう変わらないのに、2から4までのディティールが盛り込まれているのはデザインの進化と成功と言って良いでしょう。
このゲームの勝利条件として、北軍は南軍を軍事的に圧倒する(展開軍団数を3対1以上にする)か政治的に圧倒する(戦争意欲で14ポイントの差を付ける)必要があります。本ゲームでは、実は戦争意欲は直接、盤上に展開できる軍団数を制限しているので、結果として両者は連動している部分があります。
南軍の戦争意欲を下げる方法として効果が大きい物としては、リッチモンド占領(−3)がありますが、これは首都の防御効果、北軍の東部方面司令官の能力の低さがあって容易ではありません。そこで、ゲームの序盤から中盤に掛けての時期は、シェナンドー占領(−1)、奴隷解放宣言(−1)、テネシー州制圧(−1)、大西洋岸海上封鎖(−2)、メキシコ湾海上封鎖(−1)、ミシシッピ州制圧(−1)、アトランタ制圧(−1)などがポイントになります。こうしたアナコンダ戦略やミシシッピ流域制圧の重要性は、しばしば書物で指摘されますが、実は南北戦争の戦略級ゲームではなかなか適切に表現されてきませんでした。むしろ、両軍の首都が近接し、そこに両軍の主力部隊が対峙する東部戦線の直接戦闘の価値がどうしてもゲームデザイン上は高くなっていたと思います。
その意味で、今回のソロプレイでは、海上封鎖や海への進撃の価値が初めて実感できる南北戦争ゲームをプレイできて、目から鱗が落ちる思いでした。この点だけでも本作はかなり高く評価するに値します。
また、前回、本作では戦域軍が2個しか置けないことに対する不満を述べましたが、これは杞憂に終わりました。実際のゲーム展開では、序盤には野戦司令官レベルでの戦闘と言う形で西部戦線の戦いが表現されます。そして、中盤以降はアトランタからサヴァンナ、ウィルミントンへと抜ける北軍西部戦域軍による海への進撃が発生します。結果として、西部戦域軍はカンバーランド軍を表現しており、南軍はアトランタから海への進撃を止めるために西部戦域軍を使うので、結果としてテネシー軍に相当する戦い方をするようになります。このため、戦争の全期間にわたって存続して戦い続けた中央部の両軍の重要な軍はきちんと表現されます。そして、断続的な編成で流動的だった西部方面の戦いは、軍団規模の野戦司令官の戦いとして、それなりの規模で発生します。
話しを戻しますが、今回のソロプレイでは南軍が第7ターン終了時点で政治的勝利を得ました。具体的には、イベントカード徴兵が使用された状態では、北軍は最終ターンまで戦争を継続するのに11点の差を付けていなければならないのですが、9点しか差がなく敗北しました。実は第7ターンに一時、北軍はリッチモンドを占領し、その時点では継続条件を達成していました。しかし、北軍は南軍を粉砕して軍事的勝利を収めるチャンスと判断し、攻撃を続行。南軍はこれを退却して凌いだ上で、戦闘中にグラントの狙撃に成功しました。代わってミードが指揮を執りましたが、能力の低下は止む無く、そこを南軍の東部戦域軍を指揮するボリガード集軍が迂回してリッチモンドを奪回しました。ちなみにボビー・リーはグラントに敗北した時点で北軍のデービス大統領カードにより解任されていました。
と、なかなかエキサイティングな展開で最後まで盛り上がりました。
本作ではリー、ジャクソン、ロングストリート凶悪トリオ問題が発生しないので、北軍は軍的な危機をあまり感じません。しかし、ゲームが8ターンしかない中で前述の勝利条件を達成するにはスケジュール的な余裕がなく、決して楽ではありません。すると、どうしても兵力不足、指揮官の能力不足、消耗状態からの再編成の準備不足などの悪条件の中で攻勢を継続せざるを得なくなり、そこにはいろいろと落とし穴があります。特に敵地へ侵入すると、補給線が切れやすく、そうすると再編成も増援もできなくなるので、リスクが格段に高まります。このため、マップは狭いのですが、補給問題は意外に北部にとって注意深く検討する必要があります。
カードドリブンゲームの常ですが、様々な要素がイベントカード化されていて、その運用も重要です。
本作で特徴的な要素である海上封鎖もイベントカードですが、本作ではデックは両者共通で海上封鎖イベントも両者とも使えます。北軍が使うと海域ボックス2個に封鎖マーカーを置け、南軍が使うと封鎖マーカーを1個除去できます。したがって、これをどちらが引くかは大問題ですが、これは基本的に運だけで決まります。ただし、本作ではデックが3回転くらいはするのに加えて、いわゆるチューターカードが1枚あるので、海上封鎖戦はかなり激しく戦われます。北軍の効果の方が大きい分だけ封鎖は進行していきますが、海域全体で1ボックスでも空いていれば封鎖は完了しないので、なかなか封鎖しきるのは大変です。そこで、北軍は強襲上陸や海への進撃を実施して陸戦により封鎖を支援する必要が出てきます。海への進撃については説明した通りですが、強襲上陸も本作独特の味があります。フォーザピープルでは、強襲上陸は史実の半島戦役を再現する余地を作るためのルールでした。それに対して本作では海上封鎖を支援するために使うことができ、結果としてモバイルやサヴァンナに上陸するのが有力なのです。南軍には全海岸線を守るような能力はないので、これは割と簡単に成功します。しかし、前述の補給線が切れることによるデメリットが大きいので、南軍の主力部隊が撃退作戦に出てくると、なかなかリスクが高いようです。もっとも2個しかない戦域軍の一つを海岸線に引き抜かせれば十分な効果ありとも言えますが。
そんなこんなで、フォーザピープルとは全然別の戦略的要素が盛り込まれていて、なかなか興味深いです。
一度では潜在能力を全て引き出せていないと思うので、近い内にまたソロプレイしてみようと思っています。
スペイン継承戦争もそうでしたが、コンパスゲームズの戦略級ゲームはなかなか楽しませてくれます‥(^o^)