上述した通り海戦が大きな比重を占めた本戦争ですが、海戦ルールは詳細と言う訳ではありません。ただ、時代を反映した独特の雰囲気があります。
海軍はスタック単位で海へクスを航行します。海へクスは大雑把にいくつかのゾーンに分かれています。このゲームでは艦隊の移動は、一つ前のターンにスタック上に目標ゾーン番号のマーカーを裏面で置くことで計画します。したがって、計画してから実行までにタイムラグがあります。そして実行した時には、そのゾーンに向かってヘクスを辿って移動します。相手の艦隊はインターセプトを実行でき、インターセプト先のヘクスまでのヘクス数以下を1drで出せば成功し、戦闘になります。ゲーム序盤はイキケ周辺が争点で、此処にペルーも主力艦隊を駐留させている公算が高く、チリの上陸侵攻艦隊が進んでいくと迎撃されるところからゲームは開幕します。迎撃された場合に、量に勝るチリ艦隊は迎撃艦隊と同数の艦船を応戦させた上で、余分の艦船は移動を継続できます。ですので、ペルー艦隊の規模を見て余分の輸送船を十分に用意して、これに陸上部隊を積載して進めば計画に齟齬を来すことなく上陸はできます。
緒戦は上記の通りで良いのですが、実は少数精鋭のペルー艦隊と交戦するとチリ艦隊の方が損害が大きくなりがちです。結果としてチリ艦隊の数的優位はゲームの進行と共に縮小するリスクがあります。これを睨んで、どう損傷艦船を離脱させ修理するか、縮小した艦隊で上陸を強行するのか、それとも陸路で到達できる目標に切り替えていくのかをデザインします。「シェンノート最初の戦い」ほどに海戦と陸戦が緊密に連携したゲームデザインではありませんが、それでも海戦が添え物ではなく戦略的意思決定に重大な影響を持っているのが面白い所です。
海戦自体は比較的単純で、イニシアチブを判定し、イニシアチブ側が先に全艦砲撃します。次に相手が生き残った艦で砲撃します。1ラウンドで終了し、そのターンはそれ以上は両軍とも移動できません。ゲームターンはチリ軍が先攻なので、チリの艦隊を迎撃するとペルー艦隊は自分の移動ができなくなります。もっともペルー艦隊の主目的は迎撃なので、それはそれで止むを得ないのですが。砲撃は目標を決めて1drして目標の装甲値で修正し、それが砲撃艦の砲撃値以下ならヒットです。軍用艦船のほとんどは2ステップなので、1ラウンドしかない戦闘では全滅したりはしません。損傷艦は入港すれば修理可能ですが、ゲームの期間では再建や新造はできません。ですので、沈んでしまえばそれっきりです。
チリは艦数があるので撤退して修理することは現実味があります。ペルーはそうは行かないので、質的に優位にはあっても数は減っていきます。チリ艦隊に消耗戦を続けられれば、いずれ制海権はチリに奪われることになります。ただ、ゲームは全部で12ターンしかないので、その期間内で本戦略が成果を回収できるかどうかは難しい所です。