☆ピラミッドを読む

bqsfgame2013-12-11

英国SF協会賞受賞作強化月間?
プラチェットのディスクワールドは、英国では人気があり、日本でも一部に熱狂的なファンがいるようです。ただ、アメリカでは人気がなく、メジャーなSF賞を取ったことはないようです。
これもディスクワールドの一作ですが、特にシリーズのしがらみはありません。
主人公は古王国サンの後継者であるテピック。王国は強大だったらしいのですが、代々の王の立派なピラミッド作りに散財して貧乏な小国に。そのため王子は自分で稼げるように暗殺者ギルドの学校に入学します‥(^_^;
その後、父王が退位して、そのピラミッドを作る辺りからが本題。この世界のピラミッドは正に王墓ですが、巨大な質量を集めるとそこでは時間が減速する実効があり、それを利用してミイラを保管すると言う設定です。で、王になるのですが、外で学習してきたことを利用して新しいことをしようとすると、王の言葉を解釈して下達する大神官に悉く前例主義で曲げて伝えられ何もできません。この辺りは、官僚機構に対する風刺なんでしょうか。そうだとすると、なかなかに痛烈です。
しかし、史上最大のピラミッドを建設しようとすると完成以前に効果が暴走し始め、王国の次元が転換してしまい、王国は異次元空間に吸い込まれてしまいます。結果として王国を緩衝国として対峙していた二大王国は戦争状態に突入します。異次元に入った王国では、神々が実在化して暴れ出します。かくて前例主義では解決できない事態に大神官は茫然自失。これも官僚機構の保守化と硬直化のパロディなんでしょうか。他にもイギリス人にしか判らないイギリスの諸制度に対する風刺が効いているとかで、それだとイギリス人は喜ぶけどアメリカで受けないのは頷けるかなと思います。
リーダビリティは高く、アイデアの独創性、社会風刺性など、なかなか良く出来た作品です。これを選ぶ辺りは、さすがに趣味の良さで鳴る英国SF協会賞と言う感じです。
ディスクワールドシリーズの古王国系の作品には、他に「異端審問」があるようなのですが、既に絶版状態。ちょっと探してみますか‥(^o^)