新ハヤカワシリーズ第1期の掉尾を飾るのはプリーストの英国SF作家協会賞。
あとがきも含めて各所で「本書は長編ではなく連作短編集では」の意見を聞きますが、筆者は賛成できません。
本書は、全体として一冊で読むように書かれているので、やはり長編と思います。
少し説明すると、
本書はドリームアーキペラゴの島を個別に紹介する旅行ガイドの装いです。そのため、島ごとに章が分かれており独立して読めます。
ところが、読んでいくとすぐに随所に同じ人物が登場し、離れた章が密接な関係を持っていることに気付きます。神経質な読者なら、自分で読書ノートを取りながら読みたくなるでしょう。
その意味で、島を縦糸に、人物を横糸にしたタペストリーとなっています。ただ、普通のタペストリーは、もっと横糸が明確で読み取りやすいのですが、本書は意図的に読みにくく、ただの旅行ガイドのふりをするように書いてあります。ここらへんが、通好みで、作家仲間で選ぶ賞で高く評価されるけれども、読者ファン投票の賞では受賞できない理由かと思います。
率直に言って、エンターテイメントとして一級品とは言いにくい。
プリーストは、「スペースマシン」や「逆転世界」はエンタメでしたが、近年の「双生児」や本書はスリップストリームとしか言いようがありません。
読書ノートの代わりになるものとして、以下は参考になりました。
http://d.hatena.ne.jp/sakstyle/20131201/p2